ピンクの豹 THE PINK PANTHER
作曲・指揮:ヘンリー・マンシーニ
Composed and Conducted by HENRY MANCINI
(スペインQuartet Records / QR570)
1963年製作のアメリカ映画(日本公開は1964年2月)。監督は「ティファニーで朝食を」(1961)「酒とバラの日々」(1962)「グレートレース」(1965)「暁の出撃」(1970)「ビクター/ビクトリア」(1982)「スウィッチ/素敵な彼女?」(1991)等のブレイク・エドワーズ(1922〜2010)。出演はデヴィッド・ニーヴン、ピーター・セラーズ、クラウディア・カルディナーレ、ロバート・ワグナー、キャプシーヌ、ブレンダ・デ・バンジー、コリン・ゴードン、ジョン・ル・メスリエール、ジェームズ・ランフィアー、ガイ・トマジャン、マイケル・トラブショウ、リッカルド・ビリー、メリ・ウェルズ、マーティン・ミラー、フラン・ジェフリーズ他。脚本はモーリス・リッチリンとブレイク・エドワーズ。撮影はフィリップ・H・ラスロップ。
ルガシュ国のダーラ王女(カルディナーレ)が“ピンク・パンサー”と呼ばれる巨大な宝石を持ってヨーロッパに亡命。パリ警察のジャック・クルーゾー警部(セラーズ)は、ヨーロッパの各都市で暗躍する宝石泥棒“ファントム”を追っており、事件解決の鍵は“ファントム”の手先と思われる女の逮捕であると考えていた。クルーゾー警部とその妻シモーヌ(キャプシーヌ)は、イタリアのコルティーナ・ダンペッツォのスキー場にやって来るが、シモーヌは夫の留守を見計ってスキー競技に参加するチャールズ・リットン卿(ニーヴン)と密会する。クルーゾー警部は、過去の宝石盗難事件の際に必ず姿を見せるリットン卿こそ“ファントム”であると確信し、逮捕の機会をうかがっていたが、妻のシモーヌこそがその“ファントム”の手先であることに気づいていなかった。リットン卿は宝石を狙ってスキー場でバカンスを楽しんでいたダーラ王女に近づくが、そこに卿の甥ジョージ(ワグナー)が現れ、計画が狂う。実はジョージも宝石を盗もうとしており、その罪を“ファントム”に着せようとしていた……。イヴ・サン=ローランがカルディナーレとキャプシーヌの衣裳デザインを担当。製作費は約300万ドル。全世界興行収入は約1088万ドル。1964年度アカデミー賞の作曲賞にノミネートされている。当初はダーラ王女役にはオードリー・ヘップバーン、クルーゾー警部役にはピーター・ユスティノフ、シモーヌ役にはエヴァ・ガードナーとジャネット・リーが候補になっていた。
元々はデヴィッド・ニーヴン扮する“ファントム”が主役だったが、ピーター・セラーズの演じた脇役のクルーゾー警部に人気が集中し、彼を主演にして「暗闇でドッキリ」(1964)「ピンク・パンサー2」(1975)「ピンク・パンサー3」(1976)「ピンク・パンサー4」(1978)とシリーズ化され、セラーズの死後も彼抜きで「ピンク・パンサー5/クルーゾーは二度死ぬ」(1983)「(未公開)ピンク・パンサーの息子」(1993)が製作された(全てブレイク・エドワーズが監督し、ヘンリー・マンシーニが音楽を担当)。更にアニメ版の「ピンク・パンサー&クルーゾー警部」(1980/監督:ハウリー・ブラット)、スティーヴ・マーティンがクルーゾー警部を演じたリメイク版の「ピンクパンサー」(2006/監督:ショーン・レヴィ)と、その続編「ピンクパンサー2」(2009/監督:ハラルド・ズワルト)、クルーゾー警部をアラン・アーキンが演じ、バッド・ヨーキンが監督した番外編的な「クルーゾー警部」(1968)も製作された。
音楽は「ティファニーで朝食を」(1961)「追跡」(1962)「酒とバラの日々」(1962)「グレートレース」(1965)等、ブレイク・エドワーズ監督作品に欠かせないヘンリー・マンシーニ(1924〜1994)。このスコアは公開当時の1963年に米RCAレーベルから全12曲/約28分半収録のサントラLP(RCA
Victor
LSP-2795)が出ており、このアルバムはグラミー賞の6部門にノミネートされてベストセラーになるとともに、各国からも同様のアルバムがリリースされた。Quartetレーベルが2024年12月にリリースした全41曲/約107分収録のこのCD(60周年記念盤)は2枚組となっており、1枚目にはオリジナル・スコアと代替テイク等のボーナストラック、2枚目にはリマスターされた1963年盤の内容を収録。
CD1枚目の冒頭「Main Title (Theme from The Pink Panther)」は、幻想的なタッチのイントロから、プラス・ジョンソンの演奏によるテナーサックスにピアノ、ヴィブラフォン、トライアングルを加えたミステリアスかつコミカルなタッチのメインの主題へと展開するジャズ・ベースの曲で、マンシーニのスコア中でも最も有名な主題の1つ。ピンクの豹のキャラが登場するデヴィッド・デパティーとフリッツ・フレレングによるアニメのタイトルバックに流れる。「Meanwhile」は、メランコリックなタッチの主題歌「It
Had Better Be Tonight」のマンドリンによる演奏から、メインの主題のバリエーション、パーカッシヴなサスペンス音楽へ。「Ski
for Two」は、アコーディオンをフィーチャーしたリズミックなタッチからメランコリックな主題歌へ。「Cortina
(Film Version)」は、アコーディオンによるメランコリックなタッチからダンスミュージック風へ。「More Ski
for Two / How Did It Go?」は、アコーディオンによる主題歌の演奏からメランコリックなタッチ、ダイナミックな主題、メインの主題のバリエーションへ。「Nasty
Little Habits」「Piano and Strings (Film Version)」は、ジェントルなタッチのピアノジャズ。「Dinner
Party (Guitar Solo)」は、ギターによる主題歌の演奏。「She Shall Have Milk」「Uncle
Charles」「Stand Back」は、メインの主題のバリエーションによる抑制されたサスペンス音楽。「Champagne
and Quail (Film Version)」は、ジェントルなダンスミュージック。「The Lonely Princess
(Film Version)」は、アコーディオンとコーラスをフィーチャーしたメランコリックなタッチの曲。「Royal Blue
(Film Version)」は、ジェントルで気だるいタッチのジャズ。「Imbecile!」は、ダイナミックなマーチ調のアクション音楽。「It
Had Better Be Tonight (Meglio Stasera)」は、フラン・ジェフリーズのヴォーカルによるメランコリックなタッチの主題歌。作曲はマンシーニ、英語の歌詞はジョニー・マーサー、イタリア語の歌詞はフランコ・ミリアッチ。「The
Village Inn (Film Version)」は、アコーディオン、ボンゴを加えたリズミックなダンスミュージック。「Oh,
Darling」は、抑制されたタッチからチャイコフスキー作曲の幻想序曲『ロメオとジュリエット』の引用へ。「The Tiber
Twist (Film Version)」「It Had Better Be Tonight (Meglio Stasera)
Chorus」「Something for Sellers (Film Version)」は、リズミックなダンスミュージック。「The
Safe's Empty」は、メインの主題のバリエーション。「Shades of Sennett (Film Version)
/ End Titles」は、ビジーでダイナミックなダンスミュージック風のエンドタイトル。この後にボーナストラックとして代替テイク等8曲を収録。
オーケストレーションは、レオ・シュケン、ジャック・ヘイズとピート・ルゴロ。
(2025年4月)
Henry Mancini
Soundtrack Reviewに戻る
Copyright (C) 2025 Hitoshi Sakagami. All Rights Reserved.