殺意の夏 L'ÉTÉ MEURTRIER
恋路 LA REINE BLANCHE
作曲・指揮:ジョルジュ・ドルリュー
Composed and Conducted by GEORGES DELERUE
(仏Music Box Records / MBR-250)
2025年で生誕100周年を迎えるフランスの作曲家ジョルジュ・ドルリュー(1925〜1992)が、1980〜90年代に手がけた2作品のスコアをカップリングにしたCD。750枚限定プレス。
「殺意の夏(L'ÉTÉ MEURTRIER)」は、1983年製作のフランス映画(日本公開は1985年6月/英語題名は「ONE
DEADLY SUMMER」)。監督は「黄金の男」(1964)「タヒチの男」(1966)「エリザ」(1995)「クリクリのいた夏」(1999)「画家と庭師とカンパーニュ」(2007)「再会の夏」(2018)等のジャン・ベッケル(1933〜)。出演はイザベル・アジャーニ、アラン・スーション、シュザンヌ・フロン、ジェニー・クレーヴ、マリア・マシャド、イヴリーヌ・ディディ、ジャン・ガヴァン、フランソワ・クリュゼ、マニュエル・ジェラン、ロジェ・カレル、ミシェル・ガラブリュ、マリー=ピエール・カセイ、セシール・ヴァッソール、エディット・スコブ、ヴィルジニー・ヴィニョン、マイウェン他。原作・脚本は「さらば友よ」(1968)「雨の訪問者」(1970)「狼は天使の匂い」(1972)「O嬢の物語」(1975)「ロング・エンゲージメント」(2004)等のセバスチャン・ジャプリゾ(1931〜2003)。撮影はエチエンヌ・ベッケル。
1976年の春。南仏の小さな町に、ドイツ人の母パウラ(マシャド)と足が悪くて椅子に座ったきりの父ガブリエル(ガラブリュ)とともに、エリアーヌ(アジャーニ)という美しい娘が移り住んできた。“エル”と呼ばれるその娘は、いつも派手なドレスを着て目立っており、修理工兼消防士のフィオリモン(スーション)は彼女に目をうばわれてしまう。“パンポン”と呼ばれる彼にはミッキー(クリュゼ)とブブ(ジェラン)の2人の弟がいた。ある日、パンポンの家の納屋で彼と抱き合っていた時、エルはそこに置かれてあった自動ピアノを見て驚いた。彼女はパンポンと結婚して彼の家に移り住むと、わがもの顔で振る舞ったが、なぜかニーヌ(フロン)という耳の遠い伯母さんとは気が合った。彼女はパンポンの母(クレーヴ)に自動ピアノのことを聞くが、適当にはぐらかされた。1955年の雪の日、その自動ピアノをトラックに積んだ3人の男がエルの母の家に押し入り、彼女を強姦したのだった。そしてエルが生まれた。彼女はトラックを借りた男の名がルバレック(ガヴァン)であると突き止めるが……。1983年度カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品。1983年度セザール賞の主演女優賞(イザベル・アジャーニ)、助演女優賞(シュザンヌ・フロン)、脚色賞、編集賞を受賞。
ジョルジュ・ドルリューのスコアは、公開当時の1983年にフランスのDynastyレーベルから全19曲/約41分収録のサントラLP(Dynasty
2106)が出ていたが、Music
Boxレーベルが2025年3月にリリースしたこのCDにはリマスターされた全17曲/約36分を収録。1983年にはドルリュー作曲の「(未公開)L'Africain」とカップリングになった海賊版CDが出ていたが、これが正規盤CDの初リリース。
「Lello et son piano (Générique début)」は、ピアノをフィーチャーしたジェントルでリリカルなメインタイトル。「Elle」は、ピアノ、ストリングス、サックスによるややメランコリックで美しいエルの主題。「Le
samedi soir」は、アコーディオンとギターによる快活なワルツ。「Nue dans la grange」「Chez
Ferraldo」「Elle malade」は、不吉なタッチのサスペンス音楽。「L'enfance」は、ジェントルでリリカルなタッチの曲。「Le
viol」は、ストリングスによる不吉なサスペンス調から後半ダイナミックなサスペンスアクション音楽へ。「Les
souvenirs de Cognata」「Elle pleure」「Pin Pon console Elle」は、メランコリックでドラマティックなタッチの曲。「Après
le viol」は、ストリングスによる不吉なサスペンス音楽に、後半ミュージックボックス風の主題が重なる。「Chez
L'ophtalmo」は、ストリングスとピアノによるドラマティックでミステリアスなタッチの曲。「La course
cycliste」は、アコーディオンとギターによる陽気で快活なタッチの曲。「L'hôpital et la mort」「La
détermination de Pin Pon」「Gabriel et Elle」は、ドラマティックなタッチのサスペンス音楽。
「恋路(LA REINE BLANCHE)」は、1991年製作のフランス映画(日本公開は1993年11月/英語題名は「THE
WHITE QUEEN」)。監督・脚本は「イザベル・アジャーニ/抱きしめたい」(1981)「フランスの思い出」(1987)「フランスの友だち」(1989)等のジャン=ルー・ユベール(1949〜)。出演はカトリーヌ・ドヌーヴ、リシャール・ボーランジェ、ベルナール・ジロードー、ジャン・カルメ、ロール・ムートゥサミー、イザベル・カレ、ミュリエル・ピュルタール、ジュヌヴィエーヴ・フォンタネル、アントワーヌ・ユベール、ジュリアン・ユベール、ポーリーヌ・ユベール、ロイク・リュトコウスキー、シリル・レジ、マリー・ビュネル、ディディエ・ベニュロー他。撮影はクロード・ルコント。
1960年初頭のフランス、ロワール河口にある小さな港町トレントムール。リュシアン(カルメ)、その娘リリアーヌ(ドヌーヴ)、彼女の夫ジャン(ボーランジェ)と4人の子供たちのリポッシュ家は、この町で水道屋を営んでいた。ある日、20年ぶりにイヴォン・ルガルデック(ジロードー)という男が、黒人の妻アナベル(ムートゥサミー)と美しい娘ミレイユ(ピュルタール)を連れて町に帰ってきた。イヴォンとジャンは、かつてリリアーヌを巡って恋敵であり、親友でもあった。イヴォンは20年前、カーニバルでリリアーヌが“白い女王”に選ばれた日に、突然町を出ていったのだ。彼はずっと南の国で暮らして結婚し、事業に失敗して戻ってきた。一方、リュシアンには誰にも知られたくないイヴォンとの密約があった。リュシアンは、内緒でこの町から出ていくことを条件に、借金に苦しむイヴォンに金を用立てたのだ。リュシアンは派手好きなイヴォンより、地味でまじめなジャンの方を、親としてはリリアーヌと結婚させたかったからだ。それを知らないリリアーヌは、彼が突然自分の前から去ってしまったことに、裏切られたような思いを抱いていた。ジャンは、イヴォンがいなくなってリリアーヌと結婚できたことに負い目を感じながら生きてきたが……。
ジョルジュ・ドルリューのスコアは、公開当時の1991年にフランスのPolydorレーベルから全22曲/約44分収録のサントラLP(Polydor
849263)とCD(Polydor/Ciby 2000 849 263-2)が出ており、2013年にカナダのDisques
CinéMusiqueレーベルから全20曲/約43分収録のCD(Disques CinéMusique DCM 149)が出ていたが、Music
Boxレーベルが2025年3月にリリースしたこのCDにはリマスターされた全21曲/約42分半を収録。
「Le
Sainte-Marie」は、ストリングスとアコーディオンによる美しく素朴なタッチの曲。「Le retour」は、アコーディオンによるメインの主題。「Jean」「Lili」「Yvon」「Le
pardon」は、アコーディオンによるメランコリックなタッチの曲。「Les retrouvailles」「Les
adieux」は、フルートをフィーチャーしたメランコリックなタッチの曲。「Bamboulas sambas」「Les
petits ballons」は、明るく快活なタッチ。「Rouge baiser」は、優雅でジェントルなタッチのダンスミュージック。「Le
jeu de puces」「La kermesse」「Le cha-cha de la Reine」「Chez Rita」は、ライトなダンスミュージック。「L'aveu」は、ジェントルでドラマティックなタッチから後半アコーディオンによるメランコリックな主題へ。「La
robe fantôme」「La petite récompense」は、静かにドラマティックなタッチ。「La fuite
de Jean」は、メランコリックでドラマティックな曲。「Le bar des îles」は、ライトでジェントルなタッチ。「L'enfance」は、アコーディオンによるメインの主題のリプライズ。
(2025年7月)
Georges Delerue
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