恐るべき訪問者 VENOM

作曲・指揮:マイケル・ケイメン
Composed and Conducted by MICHAEL KAMEN

演奏:ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the National Philharmonic Orchestra

(スペインQuartet Records / QR543)

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1980年製作のイギリス映画(日本公開は1981年11月)。監督は「(未公開)鮮血!!悪魔の爪」(1970)「天才悪魔フー・マンチュー」(1980)「サマーストーリー」(1988)等のピアーズ・ハガード(1939〜2023)。出演はクラウス・キンスキー、オリヴァー・リード、ニコル・ウィリアムソン、サラ・マイルズ、スターリング・ヘイドン、コーネリア・シャープ、ランス・ホルコーム、スーザン・ジョージ、マイク・グウィリム、ポール・ウィリアムソン、マイケル・ゴーフ、ヒュー・ロイド、リタ・ウェブ、エドワード・ハードウィック、ジョン・フォーブス=ロバートソン他。アラン・スコールフィールドの原作を基にロバート・キャリントンが脚本を執筆。撮影はギルバート・テイラー。

国際的な犯罪者ジャック・ミューラー(キンスキー)と彼の愛人ルイーズ・アンドリュース(ジョージ)は、ロンドンに住むアメリカ人実業家でホテル・チェーンのオーナーであるハワード・アンダーソン(ヘイドン)の10歳の孫フィリップ・ホプキンス(ホルコーム)を誘拐して身代金を得ようと画策する。フィリップの母ルース(シャープ)のメイドとしてロンドンのホプキンス宅に潜り込んだルイーズは、ルースの運転手であるデイヴ・アヴァーコネリー(リード)を誘惑して、誘拐計画に引き込む。犯行当日、ミューラーはハワードとルースを外出するように仕向け、その隙にルイーズとデイヴがフィリップを誘拐しようとするが、フィリップがペットショップから持ち帰った蛇が、手違いで毒物学者マリオン・ストウ博士(マイルズ)に届けられるはずの猛毒を持つブラック・マンバにすり替わってしまっていた。ミューラーとデイヴは早めに帰宅したハワードとフィリップを拉致するが、ルイーズは毒蛇に顔を噛まれて即死してしまう。ストウ博士から通報を受けた警察がホプキンス宅を訪れるが、デイヴが警官を射殺してしまったため、ウィリアム・ブロック警視(ウィリアムソン)率いる警官隊が到着し、宅内に人質が囚われていることを知る。ミューラーから逃走用の車と100万ドルの身代金を要求されたブロックは、これを拒否するが……。

「ノスフェラトゥ」(1978)でドラキュラ伯爵を演じたクラウス・キンスキーと「ドラゴンvs7人の吸血鬼」(1973)でドラキュラを演じたジョン・フォーブス=ロバートソンが共演していたり、「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」(1976)でホームズを演じたとニコル・ウィリアムソンとグラナダTVの「(TV)シャーロック・ホームズの冒険」(1984〜1994)でワトソンを演じたエドワード・ハードウィックが共演していたりと、実に興味深いキャスティング。当初は「悪魔のいけにえ」(1974)「悪魔の沼」(1976)「ポルターガイスト」(1982)「スペースバンパイア」(1985)「スペースインベーダー」(1986)等のトビー・フーパー(1943〜2017)が監督していたが、途中で降板したため、ピアーズ・ハガードが急遽後任を引き受けることになり、準備期間が10日しかなかったという。現場ではクラウス・キンスキーとオリヴァー・リードがぶつかって、終始怒鳴り合いの大喧嘩をしていたため、撮影は難航した。ハガードに言わせれば「セットで一番いい奴はブラック・マンバだった」と。

音楽は「デッドゾーン」(1983)「リーサル・ウェポン」(1987)「ダイ・ハード」(1988)「ロビン・フッド」(1991)「三銃士」(1993)「陽のあたる教室」(1995)等のマイケル・ケイメン(1948〜2003)で、これは彼がキャリアの初期に手掛けたサスペンス・スコア。このスコアの初リリースで、1000枚限定プレス。「Main Titles」は、ホルンを加えたサスペンス調のイントロからオーケストラによる大らかで躍動的な主題へと展開するメインタイトル。「Seduction」「Preparate / Waiting」「One Dead Rabbit」は、抑制されたサスペンス音楽。「Mugambo」は、人声入りのパーカッシヴで不気味なサスペンス音楽。「Picking Up Jacmel / Drive t Jacmel House」「That's It」「On the Steps / Snake」は、ダークなタッチのサスペンス音楽。「Boy in Car / First Kill」も、ダークなサスペンス調から後半ケイメンらしい重厚でダイナミックなタッチへ。「One Dead Maid」は、ピアノとオーケストラによるダークなサスペンス音楽。「Grandfather Hunt」は、抑制されたサスペンス調から後半ダイナミックなタッチへ。「Duct」は、不気味なサスペンス音楽。「Drinks? / Dave's Leg」は、ダイナミックなサスペンス音楽。「Final Death」は、ブラスとストリングスによるアブストラクトなタッチから重厚でダイナミックなサスペンス音楽へ。ラストの「End Titles」も、不吉なサスペンス調のエンドタイトル。この後にボーナストラックとしてメインタイトルやエンドタイトルの代替テイクや、蛇を描写した不吉なサスペンス音楽等、計9曲を収録。

後の「デッドゾーン」「ロビン・フッド」等の原型となる要素が垣間見れる初期の傑作スコア。マイケル・ケイメン自身がオーケストレーションを担当。
(2024年3月)

Michael Kamen

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