テス TESS

作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE

指揮:カルロ・サヴィーナ
Conducted by CARLO SAVINA

演奏:ロンドン交響楽団
Performed by the London Symphony Orchestra

(仏Music Box Records / MBR-230)

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1979年製作のフランス=イギリス合作映画(日本公開は1980年10月)。監督は「ローズマリーの赤ちゃん」(1968)「チャイナタウン」(1974)「フランティック」(1988)「死と処女」(1995)「戦場のピアニスト」(2002)「ゴーストライター」(2010)「おとなのけんか」(2011)「オフィサー・アンド・スパイ」(2019)等のロマン・ポランスキー(1933〜)。出演はナスターシャ・キンスキー、ピーター・ファース、リー・ローソン、トニー・チャーチ、ジョン・コリン、デヴィッド・マーカム、ローズマリー・マーティン、リチャード・ピアソン、キャロリン・ピックルズ、パスカル・ドゥ・ボワッソン、シルヴィア・コールリッジ、アリエル・ドンバール、ジョン・ベット、トム・チャドボン、ジャン=クロード・ドービン他。「遙か群衆を離れて」(1967)「日蔭のふたり」(1996)「めぐり逢う大地」(2000)等のトーマス・ハーディ(1840〜1928)の原作『Tess of the d'Urbervilles』を基にジェラール・ブラッシュ、ロマン・ポランスキーとジョン・ブラウンジョンが脚本を執筆。撮影は「2001年宇宙の旅」(1968)「オリエント急行殺人事件」(1974)「遠すぎた橋」(1977)「スーパーマン」(1978)等のジェフリー・アンスワース(1914〜1978)と、「夜と霧」(1955)「鬼火」(1963)「ロシュフォールの恋人たち」(1966)「ロバと王女」(1970)等のギスラン・クロケ(1924〜1981)。

19世紀末、イギリス東北部のドーセット地方にある村マーロットで、貧しい行商人ジョン・ダービーフィールド(コリン)は、牧師から“ダービーフィールド”が征服王ウィリアムに従ってノルマンディから渡来した貴族ダーバヴィルの子孫であると告げられる。ジョンからその話を聞いた妻(マーティン)は、美しい長女テス(キンスキー、当時17歳)をダーバヴィルの邸に送り込んで金銭的な援助を受けようと考える。家族の為にダーバヴィル家を訪れたテスは、放蕩息子アレック(ローソン)に出会うが、美しいテスに夢中になった彼に森の中で凌辱されてしまう。ある夜明けにダーバヴィル家を抜け出して両親のもとに戻ったテスは、アレックの子供を産むが、わずか数週間でその子は死んでしまった。新しい生活を始めるために酪農場で働くことにしたテスは、そこで農業を学ぶ牧師の息子エンジェル・クレア(ファース)と知り合う。2人は恋に落ち、彼は正式に結婚を申し込むが、暗い過去をもつテスは躊躇し、その悩みを手紙に綴って彼の部屋にすべりこませておいた。しかしその手紙は手違いで読まれておらず、結婚式の後にやってきた別荘で、テスからアレックとの一件を聞かされたエンジェルは、別人のように冷たくなり、テスに別れを告げてブラジルの農場へと発ってしまう……。

製作費は約1200万ドル。全世界興行収入は約2010万ドル。1980年度アカデミー賞の作品賞、監督賞、作曲賞、衣装デザイン賞にノミネートされ、同賞の撮影賞と美術監督・装置賞を受賞している他、同年のゴールデン・グローブの外国映画賞と新人女優賞(ナスターシャ・キンスキー)、同年のNY批評家協会賞の撮影賞、同年のLA批評家協会賞の監督賞と撮影賞、1981年度英国アカデミー賞の撮影賞、1979年度セザール賞の作品賞、監督賞、撮影賞を受賞している。撮影を担当したジェフリー・アンスワースが撮影開始から3カ月後の1978年10月に心臓発作で他界した(本作が遺作)ため、ギスラン・クロケが残りのシーンの撮影を手がけ、この2人は本作でアカデミー賞を受賞したが、クロケも受賞から7カ月後に他界している。

音楽は「(未公開)テナント/恐怖を借りた男」(1976)「(未公開)ポランスキーのパイレーツ」(1986)でもロマン・ポランスキー監督と組んでいるフィリップ・サルド(1948〜)。これは彼が31歳の時に手がけたスコアで、彼の代表作の1つであり、このスコアでアカデミー賞とセザール賞にノミネートされている。このスコアは公開当時の1979年に仏Philipsレーベルから全11曲/約31分収録のサントラLP(Philips 9101 279)が出ており、2000年に仏Universlレーベルが出したCD(Universal France 159 898-2/「(未公開)テナント/恐怖を借りた男」とカップリング)には全13曲が収録されていたが、2023年11月にMusic BoxレーベルがリリースしたこのCDは全39曲/約123分収録のエクスパンデッド盤で、全体がリマスターされている。1000枚限定プレス。

前半の1〜11曲目までは過去にリリースされていたサントラ盤と同じ内容で、12曲目以降にエクスパンデッド・スコアを収録(内容は重複している)。12曲目「Tess - Overture」は、ドラマティックかつややメランコリックなタッチのメインの主題による序曲。スコア全体を通して、このメインの主題が様々なバリエーションで登場する。「Main Title - Heritage」は、オーケストラによるドラマティックなイントロからメインの主題のバリエーションへと展開するメインタイトル。「A Visit to the d'Urbervilles」は、メインの主題のバリエーションを織り込んだ躍動的でドラマティックな曲。「The Strawberry」も、メインの主題のリリカルでドラマティックなバリエーション。「Childhood」「Twisted Innocence」「Angel's Memories」「A Safe Place」は、ジェントルでリリカルなタッチの曲。「Rejection of Tess」「The Journey」「A Letter to Angel」「Lovers on the Run」は、メインの主題のドラマティックなバリエーション。「Love Awakening」「Winter Harvest」は、ツィンバロムの演奏によるドラマティックな曲。「Tess at Graveside」は、荘厳なタッチの曲。「Return of Tess」「Happiness」「Angel's Return」「Cursed Lovers - Love Theme」「Premonition」も、メインの主題による曲。「Return to the d'Urbervilles」は、躍動的でドラマティックな曲。「Shattered Love」「Angel's Despair」は、 メインの主題のメランコリックなタッチのバリエーション。「Tess's Flight」は、ダイナミックでドラマティックな曲。「Finale」は、メインの主題が明確な形で演奏されるフィナーレ。名曲。最後に舞踏音楽のソース曲「Procession (Complete)」「Afternoon Procession」「Twilight Procession」を収録。オーケストレーションはピーター・ナイト。
(2024年1月)

Philippe Sarde

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