アーネスト・ゴールド映画音楽集 Vol.2 THE ERNEST GOLD COLLECTION Volume 2
(未公開/TV)GORE VIDAL'S LINCOLN
トム・ホーン TOM HORN

作曲・指揮:アーネスト・ゴールド
Composed and Conducted by ERNEST GOLD

(米Dragon's Domain Records / DDR793)

 ★TOWER.JPで購入


「渚にて」(1959)「栄光への脱出」(1960)「ニュールンベルグ裁判」(1961)「おかしなおかしなおかしな世界」(1963)「愚か者の船」(1965)「戦争のはらわた」(1977)「さよならミス・ワイコフ」(1979)等のオーストリア出身の作曲家アーネスト・ゴールド(1921〜1999)が1980年代に手がけた2作品のスコアをカップリングにしたCD(「アーネスト・ゴールド映画音楽集」の第2集)。500枚限定プレス。

「(未公開/TV)GORE VIDAL'S LINCOLN」は、1988年製作のアメリカのテレビ・ミニシリーズ(2部構成/188分)。監督は「(TV)いとしのチャーリー」(1970)「ラスト・アメリカン・ヒーロー」(1973)「リップスティック」(1976)「ワン・オン・ワン」(1977)「シャレード'79」(1978)「スペースハンター」(1983)等のラモント・ジョンソン(1922〜2010)。出演はサム・ウォーターストン、メアリー・タイラー・ムーア、リチャード・マリガン、デボラ・アデア、トム・ブレナン、グレゴリー・クック、スティーヴン・カルプ、ルビー・ディー、ジェローム・デンプシー、ジェフリー・デマン、ジョン・デヴリーズ、ジョージ・エイド、ロビン・ギャメル、クリーヴォン・リトル、ジョン・ハウズマン他。「左きゝの拳銃」(1958)「パリは燃えているか」(1966)「カリギュラ」(1980)「(TV)ビリー・ザ・キッド」(1989)等の脚本を手がけたゴア・ヴィダル(1925〜2012)による原作小説を基にアーネスト・キノイが脚本を執筆。撮影はウィリアム・ウエイジーズ。第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーン(1809〜1865)の生涯を、南北戦争における彼の指揮、政敵たちとの葛藤、息子の死や精神疾患に苦しむ妻との破綻した家庭生活といった側面から描いたバイオグラフィー・ドラマ。サム・ウォーターストンがリンカーン、メアリー・タイラー・ムーアが妻メアリー・トッドを演じる。

アーネスト・ゴールドのスコアは、「Theme From “Lincoln”」が荘厳なファンファーレ調のメインの主題。この主題は「End of Part One / Opening of Part Two」「Quiet Moments」「Surrender / Ford's Theme」でも繰り返される。「Opening Credits / Arrival in Washington」は、ジューズハープ(口琴)の伴奏に力強い男声ヴォーカルとコーラスが加わる明るくパワフルな主題歌から、バンジョー、ハーモニカ、ギターをフィーチャーしたジェントルなタッチへ。「Hotel Music」「Bar Music」は、明るく軽快なサルーンミュージック。「Mark and Abe / President Lincoln」は、チェロとギターによるジェントルな主題から快活なマーチへ。「The Inaugural Ball」は、明るく軽快なマーチからダンスミュージックへ。「Mary's Illness / He's Dying / The Flag and the Funeral」は、静かにジェントルなタッチの曲。「Salon Music」は、ジェントルなダンスミュージック。「Drinks and Politics」「Saloon Music」は、ピアノをフィーチャーしたサルーンミュージック。「Spiritual Hymn」は、ドラマティックなコーラスによる賛歌。「The Weight of Command」「Grant and Abe」は、明るく軽快なマーチ。「Coffins for the Fallen」は、コーラスをフィーチャーしたジェントルなタッチの曲。「The Journey Home / Finale」は、静かにドラマティックな主題からパワフルなコーラスによるフィナーレへ。

南北戦争当時のバンジョー、フィドル、ジューズハープ、スプーン(打楽器として使用)、ファイフ(ピッコロに似た気鳴楽器)、テナー・ドラム、タック・ピアノ、サックス、アコースティック・ギター、金管楽器による演奏。オーケストレーションはエドガルド・シモーネ。

「トム・ホーン(TOM HORN)」は、1980年製作のアメリカ映画。監督は「(TV)西部の王者ダニエル・ブーン」(1964)「(TV)王様と私」(1972)「(TV)ロックフォードの事件メモ」(1974〜1980)「(TV)結婚専科」(1982)等のウィリアム・ウィアード(1927〜1987)で、本作は彼の唯一の劇場公開作品。出演はスティーヴ・マックィーン、リンダ・エヴァンス、リチャード・ファーンズワース、ビリー・グリーン・ブッシュ、スリム・ピケンズ、ピーター・キャノン、イライジャ・クック・Jr、ロイ・ジェンソン、ジェームズ・クライアン、ジェフリー・ルイス、ハリー・ノーザップ、スティーヴ・オリヴァー、ビル・サーマン、バート・ウィリアムズ、ボビー・バス他。脚本はトーマス・マクグエインとバッド・シュレイク。撮影はジョン・A・アロンゾ。

19世紀末の西部を舞台に、実在のガンマンの厳しく孤独な生涯を描いたウエスタン。バウンティ・ハンターとして西部に名をはせる早射ちガンマンのトム・ホーン(マックィーン)は、ワイオミング州のハガービルに着くと、大牧場主ジョン・C・コーブル(ファーンズワース)の訪問を受ける。コーブルは、ワイオミングの大牧場主たちが、この地方から牛泥棒を一掃するために彼を雇いたがっていると持ちかける。ホーンは次々に牛泥棒を退治し、たちまちワイオミングの人々の評判になったが、大牧場主たち以外の人々は彼を冷血漢の殺し屋として見るようになる。連邦保安官ジョー・ベル(ブッシュ)は、そんなホーンを嫉み、その名声を奪いたいと企んでいた。やがて大牧場主の中にもホーンを非情な男と見なす者が現われ、ホーンの立場は孤立していく……。製作費は約300万ドル。

初期の脚本は「明日に向って撃て!」(1969)「大統領の陰謀」(1976)「マラソン マン」(1976)「マジック」(1978)等ウィリアム・ゴールドマンが執筆し、「ダーティハリー」(1971)「突破口!」(1973)「ラスト・シューティスト」(1976)等のドン・シーゲルが監督することになっていたが、ゴールドマンの脚本を主演のマックィーンが拒絶し、シーゲルもマックィーンと衝突して降板。その後、エリオット・シルヴァーステイン、ジェームズ・ウィリアム・ゲルシオが監督候補となったが確定せず、今度はマックィーン自身が監督しようとしたが全米監督協会(DGA)の規程により認められず、結局テレビ畑の監督であるウィリアム・ウィアードに落ち着いた。尚、上記ウィリアム・ゴールドマンの脚本は、別途「(未公開/TV)MR. HORN」(1979/監督:ジャック・スターレット、出演:デヴィッド・キャラディーン、リチャード・ウィドマーク、カレン・ブラック他、音楽:ジェリー・フィールディング)として映像化されており、こちらの方が先にリリースされた。

アーネスト・ゴールドのスコアは、「Main Title」がスネアドラムのリズムによるイントロからダイナミックでサスペンスフルな主題へと展開するメインタイトル。「Tom's New Job」は、メインの主題を織り込んだ躍動的なタッチの曲。「Chasing the Rustlers」「Tom's Attemted Escape」は、抑制されたサスペンス調からダイナミックなアクション音楽へ。「Glendoline and Tom」は、フルート、ギター、ストリングスによるジェントルなタッチのグレンドリン(エヴァンス)とトムのラヴテーマ。「Tom's Rage / Gunfight in Town / Boy Shot」は、不吉なタッチのサスペンス音楽から、スネアドラムのリズムにメインの主題が重なり、ダイナミックなアクション音楽へ展開。「Tom Arrested」も、スネアドラムのリズムにメインの主題が重なる曲。「Tom and Glendoline / The Trial」は、フルート、ギター、ストリングスによるジェントルな主題から後半ダイナミックなアクション音楽へ。「Glendoline's Goodbye / End Credits」は、チェロ・ソロにギター、ストリングスを加えたジェントルな主題から、フルートによるリリカルな主題、メインの主題へと展開するエンドクレジット。最後に軽快なサルーンミュージックのソース曲「Brown's Water Hole (Source)」「Gunshot Shuffle (Source)」を収録。アーネスト・ゴールドの晩年の作品中でも、ダイナミックでパワフルなオーケストラルスコア。
(2024年1月)

Ernest Gold

Soundtrack Reviewに戻る


Copyright (C) 2024  Hitoshi Sakagami.  All Rights Reserved.