君たちはどう生きるか THE BOY AND THE HERON

作曲・指揮:久石譲
Composed and Conducted by JOE HISAISHI

演奏:フューチャー・オーケストラ・クラシックス
Performed by Future Orchestra Classics

(徳間ジャパンコミュニケーションズ / TKCA-75200)

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2023年製作の日本のアニメーション映画。監督・原作・脚本は宮崎駿(1941〜)。声の出演は山時聡真、菅田将暉、柴咲コウ、あいみょん、木村佳乃、木村拓哉、竹下景子、風吹ジュン、阿川佐和子、滝沢カレン、大竹しのぶ、國村隼、小林薫、火野正平、他。作画監督は本田雄。撮影監督は奥井敦。プロデューサーは鈴木敏夫。

宮崎駿「風立ちぬ」以来10年ぶりに手掛けた長編アニメーション作品。吉野源三郎の小説『君たちはどう生きるか』にタイトルを借り、宮崎自身の少年時代の記憶を重ねて描く自伝的ファンタジー。母を火事で亡くした11歳の少年・眞人(山時)は父・勝一(木村拓哉)に連れられ、東京から父の故郷へ引っ越す。新たな住居となった大きな屋敷には、父の再婚相手となる亡き母の妹・夏子(木村佳乃)が住んでいた。やがて眞人は謎めいた青サギ(菅田)と出会い、いつしか生と死が混然一体となった不思議な深層世界へと迷い込んでしまう……。若い主人公が不思議な世界に入り込み、人間的に成長して元の世界に戻ってくる、という構成は「千と千尋の神隠し」にも通ずる。全く宣伝・告知をしない戦略でいきなり公開され、公開4日間で興行収入21億4000万円を突破。宣伝費(ほぼ)ゼロで、これはさすが(10月8日時点で興収83億8718万円)。

音楽は宮崎駿監督作品の常連作曲家、久石譲(1950〜)。このCDのライナーノーツに掲載された鈴木敏夫プロデューサーのコメントによると、毎年1月5日の宮崎監督の誕生日に久石譲が新曲をプレゼントする恒例行事があり、そのほとんどがミニマルミュージック(音の動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復させる音楽で、現代音楽のムーブメントのひとつ)で、この映画のサントラに使われた曲の多くは、その誕生日プレゼントの曲だという。

「Ask me why(疎開)」「Ask me why(母の思い)」「Ask me why(眞人の決意)」は、久石自身の演奏によるピアノをフィーチャーした、ジェントルでリリカルなタッチのメインの主題。「白壁」も、リリカルなタッチのピアノ曲だが、この主題は三鷹の森ジブリ美術館併設の映画館「土星座」での上映用にスタジオジブリが制作した短編アニメーション映画「毛虫のボロ」(2018/原作・脚本・監督:宮崎駿)のエンディング曲の流用。「青サギ」「青サギU」は、ミとシの2音からなるミニマルな青サギの主題で、「青サギV」「青サギの呪い」ではスリリングかつドラマティックに発展する。「追憶」は、ピアノとストリングスによるややメランコリックな主題から後半オーケストラによるドラマティックなタッチへ。「黄昏の羽根」は、リリカルなピアノを加えた静かにドラマティックな曲。「思春期」「回顧」は、ストリングスによるドラマティックで躍動的な曲。「静寂」「別れ」「急接近」は、ピアノによるリリカルなタッチの曲。「矢羽根」「大伯父」「大伯父の思い」「大崩壊」は、ドラマティックでダイナミックな曲。「ワナ」は、サスペンスフルなタッチ。「聖域」「墓の主」「呪われた海」「祈りのうた(産屋)」は、ピアノをフィーチャーしたメランコリックなタッチの曲。「箱船」は、ピアノにシンセサイザー、パーカッションを加えた幻想的でスリリングなタッチ。「ワラワラ」は、シンセサイザー、サンプリングヴォイスを加えたオリエンタルで奇妙なタッチの曲。「転生」は、ワラワラの主題を含むストリングスとピアノによるドラマティックな曲。「火の雨」「炎の少女」「回廊の扉」は、躍動的なストリングスに幻想的なコーラスを加えた曲。「陽動」は、快活で幻想的なタッチの曲。「眞人とヒミ」「最後のほほえみ」は、ピアノとストリングスによるジェントルなタッチの曲。「巣穴」「隠密」は、ストリングスのピッチカートを加えた快活でスリリングなタッチの曲。「大王の行進」は、ダイナミックなマーチ。最後に米津玄師の作詞・作曲・プロデュース・ヴォーカルによる主題歌「地球儀」を収録。
ゲストコンサートマスターは郷古廉、コーラスは麻衣&リトルキャロル
(2023年11月)

久石譲

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