ゴッドファーザー THE GODFATHER

作曲:ニーノ・ロータ
Composed by NINO ROTA

指揮:カルロ・サヴィーナ
Conducted by CARLO SAVINA

(米La-La Land Records / LLLCD 1610)

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1972年製作のアメリカ映画。監督は「カンバセーション…盗聴…」(1973)「ゴッドファーザーPART II」(1974)「地獄の黙示録」(1979)「ワン・フロム・ザ・ハート」(1982)「ランブルフィッシュ」(1983)「コットンクラブ」(1984)「ドラキュラ」(1992)「レインメーカー」(1997)「Virginia/ヴァージニア」(2011)等のフランシス・フォード・コッポラ(1939〜)。出演はマーロン・ブランド、アル・パチーノ、ジェームズ・カーン、リチャード・カステラーノ、ロバート・デュヴァル、スターリング・ヘイドン、ジョン・マーリー、リチャード・コンテ、アル・レッティエリ、ダイアン・キートン、エイブ・ヴィゴダ、タリア・シャイア、ジャンニ・ルッソ、ジョン・カザール、ルディ・ボンド、アル・マルティーノ、モーガナ・キング、レニー・モンタナ、ジョン・マルティーノ、サルヴァトーレ・コルシット、リチャード・ブライト、アレックス・ロッコ、トニー・ジョルジオ、ヴィトー・スコッティ、ヴィクター・レンディーナ、シモネッタ・ステファネッリ、アンジェロ・インファンティ、ソフィア・コッポラ他。「大地震」(1974)「スーパーマン」(1978)「シシリアン」(1987)「コロンブス」(1992)等のマリオ・プーゾ(1920〜1999)の原作を基にフランシス・フォード・コッポラとマリオ・プーゾが脚本を執筆。撮影は「大統領の陰謀」(1976)「マンハッタン」(1979)「カイロの紫のバラ」(1985)「推定無罪」(1990)等のゴードン・ウィリス(1931〜2014)。メイクアップは「エクソシスト」(1973)「タクシードライバー」(1976)「マラソン マン」(1976)「スキャナーズ」(1981)「アマデウス」(1984)等のディック・スミス(1922〜2014)。製作はアルバート・S・ラディとロバート・エヴァンス。

イタリア系移民としてアメリカに渡り、巨大な犯罪組織となったマフィアの内幕を描く名作。1945年の夏、コルレオーネの屋敷では彼の娘コニー(シャイア)の結婚式が盛大に行なわれており、一族の者たちや友人たち、組織のメンバーたち数百名が集まっていた。ブラインドが降ろされた書斎では、ドン・ヴィトー・コルレオーネ(ブランド)が、友人たちの頼み事を聞いていた。シシリーでは、娘の結婚式の日に受けた願いを拒むことはできない、とのしきたりがあった。彼は、貧しく微力な者であっても助けを求めてくれば親身になって問題を解決してやり、その報酬は、友情の証と“ドン”あるいは“ゴッドファーザー”という愛情のこもった尊称だった。そして、彼の呼び出しにいつでも応じて恩を返せばよかった。そんなある日、麻薬を商売にしている危険な男ヴァージル・ソロッツォ(レッティエリ)が、コルレオーネ・ファミリーに仕事の話を持ちかけてきた。政界や警察に顔のきくドン・コルレオーネのコネを期待しての提案だったが、ドンはその話を丁重に断った。ドンさえいなくなれば取引は成立すると判断したソロッツォは、ある冬の日の夕暮れどきに、組織の事務所から出てきたドンを手下に襲撃させた。銃弾を何発も受けたが、強靱なドンは一命を取りとめた。ソロッツォの背後にはタッタリア・ファミリーがあり、ニューヨークの5大ファミリーが密かに動いていた。こうして1947年の戦いが始まった。米国海兵隊の英雄である末息子マイケル・コルレオーネ(パチーノ)は、これまで組織の仕事に関わることを避けてきたが、父が狙撃されたと知って病院に駈けつけ、機転を利かせて更なる襲撃からドンを守った。コルレオーネ家では、気性の激しい長男ソニー(カーン)が部下を指揮してドンの復讐を画策していたが、一家の養子で顧問役であるトム・ヘイゲン(デュヴァル)は、5大ファミリーとの全面戦争を避けようとしていた……。マリオ・プーゾの原作では、実在のコーザ・ノストラ(マフィア)のボスであるジョー・プロファチ(1897〜1962)とヴィトー・ジェノヴェーゼ(1897〜1969)をモデルにしてヴィトー・コルレオーネが描かれており、マーロン・ブランドはドン・ヴィトーを演じるにあたり、やはり実在のボス、フランク・コステロ(1891〜1973)のしゃがれた声を真似したという。製作費は約600万ドル、全世界興行収入は約2億5034万ドル。1972年度アカデミー賞の監督賞、助演男優賞、衣装デザイン賞、音響賞、編集賞にノミネートされ、作品賞、主演男優賞(マーロン・ブランド)、脚色賞を受賞している他、同年のゴールデン・グローブの作品賞(ドラマ)、監督賞、男優賞(ドラマ)、脚本賞、音楽賞、英国アカデミー賞の作曲賞(アンソニー・アスキス映画音楽賞)、全米批評家協会賞の主演男優賞(アル・パチーノ)を受賞している。

1976年10月に日本テレビでノーカット放送された際の日本語吹替キャストは、マーロン・ブランド(鈴木瑞穂)、アル・パチーノ(野沢那智)、ジェームズ・カーン(穂積隆信)、リチャード・カステラーノ(富田耕生)、ロバート・デュヴァル(森川公也)、スターリング・ヘイドン(北山年夫)、ジョン・マーリー(加藤精三)、リチャード・コンテ(真木恭介)、アル・レッティエリ(小林清志)、ダイアン・キートン(鈴木弘子)、エイブ・ヴィゴダ(塩見竜介)、タリア・シャイア(小谷野美智子)、ジャンニ・ルッソ(青野武)、ジョン・カザール(大塚国夫)、アル・マルティーノ(山内雅人)、モーガナ・キング(沼波輝枝)、レニー・モンタナ(今西正男)、ジョン・マルティーノ(伊武雅之)、サルヴァトーレ・コルシット(富田仲次郎)、アレックス・ロッコ(家弓家正)、トニー・ジョルジオ(寺島幹夫)、ヴィクター・レンディーナ(宮川洋一)、シモネッタ・ステファネッリ(信沢三恵子)他の豪華声優陣だった。

音楽は「甘い生活」(1959)「8 1/2」(1963)「サテリコン」(1969)「フェリーニのローマ」(1972)「フェリーニのアマルコルド」(1974)といったフェデリコ・フェリーニ監督作品や「太陽がいっぱい」(1960)「山猫」(1963)「ロミオとジュリエット」(1968)「ワーテルロー」(1970)「ナイル殺人事件」(1978)等のイタリアの名作曲家ニーノ・ロータ(1911〜1979)。パラマウントはヘンリー・マンシーニを起用しようとしていたが、純粋なイタリア人作曲家を希望したコッポラ監督は、自らローマに出向き、当初は興味を示さなかったロータに直談判して作曲を依頼したという。このスコアは、公開当時の1972年に米Paramountレーベルから全12曲/約31分半収録のサントラLP(Paramount Records PAS 1003)が出ており、1991年に米MCAレーベルから同内容のCD(MCA Records MCAD-10231)が出ている他、各国から同内容のアルバムが何度も再発されているが、La-La Landレーベルが2022年11月にリリースしたこのCDは、2枚組で全57曲/約111分半収録の“50周年記念盤”で、5000枚限定プレス。CD1枚目にはエクスパンデッド・スコアと代替テイク等の追加音楽、2枚目には過去のサントラ盤の内容をリマスターしたものとボーナストラック(監督の父カーマイン・コッポラ作曲による劇中のダンス音楽等)を収録。

1枚目の冒頭「Main Title / Corleone Waltz #1」は、トランペット・ソロによるノスタルジックなタッチのメインの主題(ゴッドファーザーの主題)から、同じ主題によるワルツへと展開するメインタイトル。「Hollywood」は、ビッグバンド・ジャズ。「The Horse's Head」は、メインの主題を織り込んだ不気味なタッチから、徐々にサスペンスが盛り上がる曲。「Sollozzo the Turk / Luca Brasi」は、ダークで不吉なタッチの曲。「Christmas / Prelude to Murder」は、コーラスを織り込んだ明るく快活な主題から、同じ主題のまま不吉なタッチに展開。「The Aftermath」は、メインの主題。「Bad News」は、メインの主題のバリエーションからメランコリックなタッチのマイケルの主題へ展開。「Bad Luck / Sicilian Message / Meditation」は、ダークで陰鬱なタッチからマイケルの主題へ。「The Halls of Fear (Extended Version)」は、ダークで不吉なタッチからトランペットによるマイケルの主題へ。「Michael's Decision / The Waiting Game」は、メインの主題を織り込んだダークなタッチからマイケルの主題へ。「Armed and Ready」は、ダイナミックなサスペンス音楽。「Set the Meeting / Michael Takes Over」「Marry Me, Kay」「The New Godfather (Film Version)」も、メランコリックなタッチのマイケルの主題。「The Pickup (Extended Version)」は、ダークで不吉なタッチの主題に軽快なダンスミュージックがかぶさり、後半ダイナミックなサスペンス音楽へ。「The Getaway」は、マイケルによる銃撃のシーンで、彼の主題がホルンの強いアタックにより演奏される。「Sicilian Pastorale」は、シシリーの田舎を描写した素朴な主題から、オーボエ、マンドリン、アコーディオンをフィーチャーした有名な(マイケルとアポロニアの)愛のテーマへ。「Love Theme from the Godfather (Film Version)」では、この「愛のテーマ」が明確な形で演奏される。これは映画音楽史上でも最も有名な曲の1つであろうが、後述する事情により、この主題があったためにニーノ・ロータはアカデミー賞の作曲賞の対象外となってしまった。「Corleone Waltz #2」「Corleone Waltz #3」は、メインの主題によるワルツ。「Apollonia」も、愛のテーマのバリエーション。「Sonny's Dead」は、メインの主題からマイケルの主題へ。「Reunion」は、トランペット・ソロによるメインの主題からダークで不吉なタッチへ。「Las Vegas Strip」は、軽快なダンスミュージック風の曲。「Too Little Time」は、チェロ・ソロによるメインの主題。「The Baptism (Extended Version)」は、教会でマイケルが妹コニーの息子(ソフィア・コッポラ演じる赤ちゃん)を洗礼する過程にコルレオーネ・ファミリーによる襲撃のモンタージュが重なるシーンでの、荘厳なオルガンによるダークで不吉なタッチの曲で、後半の襲撃シーンではドラマティックに盛り上がる。「No Tears for Tessio」は、トランペット・ソロによるメインの主題からチェロ・ソロによるマイケルの主題へ。「Finale」は、クラリネットとギターをフィーチャーしたマイケルの主題によるフィナーレ。「End Credits」は、マイケルの主題、マンドリンによる愛のテーマ、ヴァイオリン・ソロによるメインの主題、フルオーケストラとマンドリンによるマイケルの主題へと展開するエンドクレジット。この後に代替テイク等の追加音楽7曲を収録。

コッポラ監督からマイケルとアポロニアの愛のテーマを追加で作曲してほしいと要請されたニーノ・ロータは、多忙な中で新しい主題を作曲するのは時間の無駄だと感じ、過去に手がけた主題のいくつかを友人たちに聞かせて選ばせ、1958年製作のイタリアのコメディ映画「(未公開)Fortunella」(監督:エドゥアルド・デ・フィリッポ、出演:ジュリエッタ・マシーナ、アルベルト・ソルディ)に彼が作曲した主題を流用することにした。パラマウントは「ゴッドファーザー」のスコアをアカデミー賞の作曲賞(Original Dramatic Score)の候補として提出したが、匿名のイタリア人作曲家グループがアカデミーに電報を送り、このスコアの中の「愛のテーマ」は、過去に別のイタリア映画で使用されているので、アカデミーのルールに従えばオリジナル・スコアとは見なされないはずだ、と通告してきた。「愛のテーマ」はスコア全体の中で合計7分程度しか流れないが、映画会社がこの曲を強く前面に出してプロモーションしたため、この映画を代表する最も印象的な主題として広く認知された(パーシー・フェイス・オーケストラがカヴァー演奏をリリースした他、アンディ・ウィリアムス等の歌手がラリー・キュージックによる詞をつけた『Speak Softly Love』を歌ったりした)。結果としてスコア全体が作曲賞の対象からはずされてしまったため、ロータはノミネートすらされなかった(抜けたスロットにはジョン・アディソン作曲の「探偵<スルース>」が入ったが、最終的に受賞したのは20年ぶりにリヴァイヴァル上映されたチャールズ・チャップリン監督の「ライムライト」(1952)のスコアだった)。一方で、ロータはこのスコアでゴールデン・グローブの音楽賞、英国アカデミー賞の作曲賞、グラミー賞の映画・テレビサウンドトラック部門賞を受賞したほか、1974年の「ゴッドファーザーPART II」のスコアではアカデミー賞の作曲賞を見事受賞しているが、このスコア中にも1作目の「愛のテーマ」は含まれていた。アカデミーに告発の電報を送らせたのは「(未公開)Fortunella」のプロデューサーだったディノ・デ・ラウレンティスではないかとの憶測があり、イタリアでもコケたこの旧作ではロータと契約すら交わさず何のフィーも支払わなかったラウレンティスが、「ゴッドファーザー」の興行的大成功から何らかの利益を得ようと画策したのではないかと考えられている。

このCDの収録曲は以下の通り。

DISC 1

SCORE PRESENTATION

1. Main Title / Corleone Waltz #1 1:22
2. Hollywood* 1:26
3. The Horse's Head** 1:32
4. Sollozzo The Turk** / Luca Brasi 1:57
5. Christmas* / Prelude To Murder* 3:19
6. The Aftermath 0:32
7. Bad News** 0:54
8. Bad Luck / Sicilian Message / Meditation* 1:22
9. The Halls Of Fear** (Extended Version) 4:21
10. Michael's Decision** / The Waiting Game** 2:18
11. Armed And Ready** 0:32
12. Set The Meeting** / Michael Takes Over 1:19
13. The Pickup* (Extended Version) 3:02
14. The Getaway 0:22
15. Sicilian Pastorale** 3:01
16. Love Theme From The Godfather (Film Version) 2:28
17. Corleone Waltz #2* 0:22
18. Apollonia 1:22
19. Sonny's Dead** 1:40
20. Reunion** 2:22
21. Marry Me, Kay 1:15
22. Las Vegas Strip* 0:37
23. Too Little Time 1:50
24. The Baptism (Extended Version) 5:08
25. No Tears For Tessio** 0:55
26. The New Godfather (Film Version)* 0:50
27. Corleone Waltz #3* 1:59
28. Finale 1:05
29. End Credits** 3:19

TOTAL SCORE TIME 53:30

ADDITIONAL MUSIC

30. Main Title (Alternate) 0:36
31. The Horse's Head (Film Version) 1:19
32. Bad Luck (Alternate) 2:03
33. Set The Meeting (Alternate) 0:40
34. The Horse's Head (Trumpet Solo) 1:04
35. The Halls of Fear Pt. 1 (Film Version) 3:05
36. End Credits (Alternate) 3:53

TOTAL ADDITIONAL MUSIC TIME 12:58

TOTAL DISC TIME 1:06:28

DISC 2

ORIGINAL SOUNDTRACK ALBUM

1. Main Title (The Godfather Waltz) 3:06
2. I Have But One Heart 2:56 Performed by Al Martino
3. The Pickup 2:54
4. Connie's Wedding 1:33
5. The Halls Of Fear 2:11
6. Sicilian Pastorale 3:01
7. Love Theme From The Godfather 2:41
8. The Godfather Waltz 3:34
9. Apollonia 1:23
10. The New Godfather 1:59
11. The Baptism 1:49
12. The Godfather Finale 3:53

ORIGINAL ALBUM TIME 31:30

BONUS TRACKS

13. Manhattan Serenade 1:21
14. The Godfather Tarantella 3:02
15. The Godfather Mazurka 2:56
16. The Godfather Foxtrot 2:50
17. This Loneliness 1:46
18. Lucky 0:43
19. Connie's Wedding (Music Only) 1:25
20. Antico Canto Siciliano 0:56
21. Mazurka ala Siciliana 0:26

TOTAL BONUS TIME 15:40

TOTAL DISC TIME 47:10

TOTAL COLLECTION TIME 1:53:38

* Not used in film
** Contains material not used in film

(2023年7月)

Nino Rota

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