カトマンズの男 LES TRIBULATIONS D'UN CHINOIS EN CHINE

作曲・指揮:ジョルジュ・ドルリュー
Composed and Conducted by GEORGES DELERUE

(仏Music Box Records / MBR-223)

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1965年製作のフランス=イタリア合作映画(日本公開は1966年5月/アメリカ公開題名は「CHINESE ADVENTURES IN CHINA」/イギリス公開題名は「UP TO HIS EARS」)。監督は「大盗賊」(1961)「リオの男」(1963)「まぼろしの市街戦」(1967)「おかしなおかしな大冒険」(1973)「ベルモンドの怪盗二十面相」(1975)「(未公開)ソフィー・マルソーの愛、革命に生きて」(1988)「(未公開)愛と復讐の騎士」(1997)等のフィリップ・ド・ブロカ(1933〜2004)。出演はジャン=ポール・ベルモンド、ウルスラ・アンドレス、マリア・パコーム、ヴァレリー・ラグランジュ、ヴァレリー・インキジノフ、ジョー・サイド、マリオ・ダヴィッド、ポール・プレボワ、ジェス・ハーン、ジャン・ロシュフォール、ダリー・コウル、モーリス・オーゼル、ボリス・レニッセヴィッチ他。「月世界旅行」(1902)「海底二万哩」(1954)「80日間世界一周」(1956)「地底探険」(1959)「(未公開)SF巨大生物の島」(1961)等の映画化作品があり“SFの父”とも呼ばれるフランスの作家ジュール・ヴェルヌ(1828〜1905)の原作『シナ人の苦悶(Les Tribulations d'un Chinois en Chine)』を基にダニエル・ブーランジェが脚本を執筆。撮影はエドモン・セシャン。

莫大な遺産を受け継ぎ、あらゆる快楽に飽き果て、生きている意義も見出せないアルチュール・ランプルール(ベルモンド)は、何度も自殺しようとして失敗していた。フィアンセのアリス(ラグランジュ)、執事のレオン(ロシュフォール)たちを連れて世界一周航海に出た彼は、香港に着いた時に株の大暴落での破産を弁護士ビスコトン(コウル)から通告され、自殺の名目ができたと喜ぶが、中国人の友人ミスター・ゴオ(インキジノフ)は「どうせ死ぬなら有意義に」とアルチュールを止め、彼に200万ドルの生命保険をかけた。ゴオは「1ヵ月以内に優雅に殺してあげるよ」と言い、2人の殺し屋をアルチュールに差し向ける。すると、自殺志願だったアルチュールが、突然生命の危険を感じて逃げまわりはじめた。港のバーに駆け込んだ彼は、考古学者志望だが香港のキャバレーでストリッパーをアルバイトでやっているアレクサンドリーヌ・ピナルデル(アンドレス)に匿ってもらう。アルチュールは彼女に一目惚れしてしまうが……。製作当時、主演のベルモンドとアンドレスは実際に交際していた。原作は中国が舞台で主人公は中国人だが、この映画は中国で撮影ができなかったため、いずれも登場しない。

音楽は「大盗賊」(1961)「リオの男」(1963)「ピストン野郎」(1964)「まぼろしの市街戦」(1967)「君に愛の月影を」(1969)「ベルモンドの怪盗二十面相」(1975)「(未公開)ソフィー・マルソーの愛、革命に生きて」(1988)等でもフィリップ・ド・ブロカ監督と組んでいるジョルジュ・ドルリュー(1925〜1992)。このスコアは公開当時の1965年にUnited Artistsレーベルから全17曲/約31分収録のサントラLP(United Artists UAL 4136)が出ており、2006年にフランスのUniversalレーベルが出した「リオの男」のスコアとカップリングのCD(Universal France 984 349-4)には全16曲が収録されていたが、Music Boxレーベルが2023年4月にリリースしたこのCDは全30曲/約55分収録のコンプリート・スコアで、1000枚限定プレス。

「Les Tribulations d'un Chinois en Chine」は、中華風のイントロから明るく快活なワルツ調の主題へ展開するメインタイトル。「Les joies de la famille」は、明るくリリカルなタッチのメインの主題。「Alexandrine」は、フルートとストリングスによるメランコリックかつジェントルなアレクサンドリーヌの主題。「Charlie Fallinster」「Marche dans la montagne」「Fallinster attaque」「L'étrange Mister Goh」「Piège en Everest」「Les cinq cercueils」「À la rescousse d'Alexandrine」は、ダークで重厚なタッチのサスペンス音楽。「Croisière en Orient」「Cabaret chinois」「Sur les sampans」は、中華風のジェントルな主題。「Arthur recherché」は、不吉なサスペンス音楽からコミカルな主題へ。「Dans les rues de Shanghai」「Poursuite en ballon」「À la poursuite de Suzie et Cornelius」は、明るくコミカルで快活な曲。「Striptease d'Alexandrine」「Striptease d'Arthur」は、ピアノとスネアドラムによる明るく快活なワルツ調の主題。「Dernier crépuscule」は、不吉なサスペンス音楽から、フルートによる静かにドラマティックな主題、アレクサンドリーヌの主題へ。「Promenade à Delhi」は、躍動的でエスニックなタッチの曲。「Tentatives de suicide」は、ドラマティックでメランコリックなタッチから明るく快活なメインの主題へ。「Alexandrine (version 2)」は、女声ヴォーカルを加えたアレクサンドリーヌの主題。「Menace à Hong Kong」は、中華風の主題からジェントルなジャズへ。「Le bateau des pirates」は、ダークで重厚なサスペンス音楽からアレクサンドリーヌの主題へ。「Solitude d'Arthur」は、ダークでドラマティックなタッチから明るく快活なメインの主題へ。「Kabuki」は、中華風の主題(“歌舞伎”の音楽ではない)。「La route des éléphants」は、ミリタリスティックなマーチ。「Final」は、メインの主題のリプライズによるフィナーレ。「Un Chinois en Chine」は、明るく優雅なワルツ。
コメディ調の冒険活劇にふさわしい明るくカラフルなタッチのスコアで、ドルリューの陽性の面が強くでている。
(2023年7月)

Georges Delerue

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