ルディ/涙のウイニング・ラン RUDY

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH

演奏:ハリウッド・スタジオ交響楽団
Performed by the Hollywood Studio Symphony

(米Varese Sarabande / VCL 0922 1221)

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1993年製作のアメリカ映画(日本公開は1994年6月)。監督は「勝利への旅立ち」(1986)「想い出のジュエル」(1989)「ムーンライト&ヴァレンチノ」(1995)「(未公開)ジェラルド・バトラー in THE GAME OF LIVES」(2004)等のデヴィッド・アンスポー(1946〜)。出演はショーン・アスティン、ジョン・ファヴロー、ネッド・ビーティ、グレタ・リンド、スコット・ベンジャミンソン、メアリー・アン・ジバス、チャールズ・S・ダットン、リリ・テイラー、クリストファー・リード、デボラ・ホイッテンバーグ、クリストファー・アーウィン、ロバート・プロスキー、ジェイソン・ミラー、ヴィンス・ヴォーン、チェルシー・ロス他。脚本は「勝利への旅立ち」(1986)「(未公開)ジェラルド・バトラー in THE GAME OF LIVES」(2004)「ビニー/信じる男」(2016)等のアンジェロ・ピッツォ。撮影はオリヴァー・ウッド。

イリノイ州の田舎町に住む少年ダニエル・“ルディ”・ルティガー(アスティン)の夢は、フットボールの名門ノートルダム大学のチームでプレーすることだったが、体格が小柄な上に成績も悪く、家庭も裕福でない彼にとって、それは夢のまた夢だった。高校卒業から4年が過ぎ、父ダニエル(ビーティ)や兄フランク(ベンジャミンソン)が働く鉄鋼所に勤めていたルディは、夢を捨てきれず、学資を貯めながらチャンスを伺っていたが、そんな彼をフランクも婚約者のシェリー(テイラー)も理解しようとしなかった。ある日、親友のピート(リード)が鉄鋼所の事故で死に、唯一の理解者を失ったルディは、自分自身の心の声に従おうと決意する。その熱意に打たれたキャヴァナー神父(プロスキー)は、まず短期大学へ入り本校へ転入することを勧める。キャンパスで友人になったD・ボブ(ファヴロー)の協力や神父の応援、そして本人の猛勉強により、ノートルダム大への編入が認められたが、彼のひたむきさにもかかわらず、フットボールチームのレギュラーに選ばれることはなかった……。インディアナ州の高校バスケットボール・チームの実話を描いた「勝利への旅立ち」(1986)を見た実在のルディ・ルティガーが、同作の監督デヴィッド・アンスポーと脚本家アンジェロ・ピッツォに自らの体験の映画化を提案し、実現したもの(ピッツォは当初“スポーツ映画専門”と思われるのを嫌い、ルディの提案に興味を示さなかったらしい)。アンスポー監督による真摯で抑制されたタッチの演出が自然な感動を生む。全世界興行収入は約2288万ドル。

音楽は「勝利への旅立ち」(1986)でもデヴィッド・アンスポー監督と組んでいるジェリー・ゴールドスミス(1930〜2004)で、これは「勝利への旅立ち」と並び、“感動系”の彼のベスト・スコアの1つだろう。アンスポーとピッツォにとって、この映画のスコアの作曲家にゴールドスミス以外は考えられず、ゴールドスミス自身も、この2人が次に手がける作品が何であれ、スコアを作曲したいと考えていたという。このスコアは、公開当時の1993年にVareseレーベルが全10曲/約37分収録のサントラCD(Varese Sarabande VSD-5446)を出していたが、同じVareseレーベルが2022年9月にリリースしたこのDeluxe Edition CDは、全24曲/約67分収録のコンプリートスコアで、3000枚限定プレス。

「Main Title」は、フルートとハープによる主題からピアノとコーラス、ストリングスが加わり、フルオーケストラにより美しく感動的に盛り上がるメインタイトル。涙なしには聴けない心のこもった名曲で、このメインの主題はスコア全編を通して様々なバリエーションで登場する。「No Catch」も、フルート、ピアノ、ストリングスによるメインの主題。「The Speech / Last Game / Be Grateful」「The Jacket」「A Start」「The Plaque」は、メインの主題を織り込んだジェントルなタッチの曲。「To Notre Dame」は、静かにジェントルなタッチからドラマティックな主題、メインの主題へ。「More Girls」は、メインの主題の快活なタッチのバリエーション。「Hike Notre Dame!」「Notre Dame Victory March」は、ア・カペラによるノートルダム大の応援歌。「Empty Stadium / The Key」は、静かにジェントルな主題からドラマティックなタッチへ。「Training」「More Training」「Accepted」「For Father」「Team Play / Ready Champ?」も、メインの主題のバリエーション。「Tryouts」は、メインの主題によるイントロから躍動的でパワフルなタッチへ展開。「Waiting」「Back on the Field」「Take Us Out」も、躍動的でダイナミックなタッチの曲。この「Take Us Out」は、2008年にジョン・マケイン上院議員が大統領選挙に出馬した際に公式テーマ音楽として使った曲。「The Final Game」は、重厚なティンパニによるイントロから荘厳なフレンチホルンの主題、メインの主題を織り込んだダイナミックでパワフルなゲーム・シーンの音楽へと展開し、クライマックスではメインの主題がコーラス入りで高らかに盛り上がる。感動的な名曲。「The Key」は、静かにジェントルなタッチから躍動的な主題へ。ラストの「To Notre Dame」は、静かにジェントルでドラマティックな主題からメインの主題へと展開して締めくくる。

ジェリー・ゴールドスミスは特にスポーツ・ファンというわけではなく、「勝利への旅立ち」を手がけた際に、原題名の「Hoosiers」が何を意味するのかも知らなかったという(“インディアナ州民”のこと)。「勝利への旅立ち」とこの作品に共通するのは、あらゆく困難と障害を不屈の精神によって乗り越えて夢を実現していく主人公たちのドラマであり、ゴールドスミスの音楽も、ジャンルではなくキャラクターから着想され構築されている。この2作品は、ゴールドスミス自身のお気に入りのスコアで、自ら指揮した自作のコンサートでも好んで演奏した。全ての映画音楽ファンにお薦めしたい名盤。
(2023年1月)

Jerry Goldsmith

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