砲艦サンパブロ THE SAND PEBBLES

作曲:ジェリー・ゴールドスミス
Composed by JERRY GOLDSMITH

指揮:ライオネル・ニューマン
Conducted by LIONEL NEWMAN

(米Intrada / INT 7170)

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1966年製作のアメリカ映画(日本公開は1967年3月)。製作・監督は「地球の静止する日」(1951)「重役室」(1954)「ウエスト・サイド物語」(1961)「たたり」(1963)「サウンド・オブ・ミュージック」(1965)「アンドロメダ…」(1971)「スター・トレック」(1979)等のロバート・ワイズ(1914〜2005)。出演はスティーヴ・マックィーン、リチャード・アッテンボロー、リチャード・クレンナ、キャンディス・バーゲン、エマニュエル・アルサン(マラヤット・アンドリアン)、マコ(岩松信)、ラリー・ゲイツ、チャールズ・ロビンソン、サイモン・オークランド、フォード・レイニー、ジョー・ターケル、ギャヴィン・マクロード、ジョー・ディ・レダ、リチャード・ルー、ジェームズ・ホン他。リチャード・マッケナの原作『サンパブロ号乗組員』を基にロバート・アンダーソンとロバート・ワイズが脚本を執筆。撮影はジョセフ・マクドナルド。

1926年。中国統一を目指す中国人の排外思想が激化していた時期に、列国は揚子江沿岸の権益と人命財産を守るため艦艇を出動させていた。長沙に駐留する米海軍の砲艦サンパブロ号に着任したジェイク・ホルマン1等機関兵(マックィーン)は、艦が中国人の支配下にあり、コリンズ艦長(クレンナ)ですら制御できない状態にあると知り、機関室だけでも自分の責任下に置こうとしたが、中国人乗組員によって阻止されてしまった。ホルマンは、艦内で唯一親しくなったフレンチー・バーゴイン(アッテンボロー)と、よく一緒に上陸しては酒場へと出かけた。そんな中、揚子江沿岸の情勢が悪化し、アメリカ人の宣教師ジェームソン(ゲイツ)が阿片を栽培した罪で国民軍に捕らえられた。米中の折衝により彼は放免されたが、伝道団の人々が軍に保護されることを拒絶したため、艦は彼らを残し上海へ引揚げることになった。一方、蒋介石が南京を占拠し、米海兵隊の上海上陸の報が入ると、コリンズ艦長は名誉挽回を図って宣教師たちの救出に向かったが……。第二次大戦前の中国を舞台にしながらも、大国の海外派兵によって犠牲となる水兵たちを描き、製作当時に激しさを増していたベトナム戦争への批判がこめられた作品。製作費は約1200万ドル。1966年度アカデミー賞の作品賞、主演男優賞、助演男優賞(マコ)、撮影賞(カラー)、作曲賞、美術監督・装置賞(カラー)、音響賞、編集賞にノミネートされている他、同年のゴールデン・グローブの助演男優賞をリチャード・アッテンボローが受賞している。フレンチーが惚れる酒場の女メイリーを演じたエマニュエル・アルサン(1932〜2005)は、タイ生まれの女優・小説家で、ジュスト・ジャカンが監督しシルヴィア・クリステルが主演した「エマニエル夫人」(1974)の原作者として知られる(後に執筆者は彼女の夫でフランス外交官だったルイ=ジャック・ロレ=アンドリアンと判明)。

音楽は「スター・トレック」(1979)でもロバート・ワイズ監督と組んでいるジェリー・ゴールドスミス(1930〜2004)。このスコアは公開当時の1966年に20th Century Foxレーベルから全11曲/約34分収録のサントラLP(20th Century Fox S-4189)が出ており、その後2002年にVarese Sarabandeレーベルが全30曲/約75分収録のCD(Varese Sarabande CD Club VCL 0702 1010/3000枚限定プレス)、2011年にIntradaレーベルが全50曲/約107分収録の2枚組CD(Intrada MAF 7116)を出しているが、今回同じIntradaレーベルが2022年4月にリリースした2枚組CDは全51曲/約113分収録のコンプリートスコアで、1枚目にオリジナルスコア、2枚目に代替テイクとソース曲を収録(リミックス、リマスター済)。

CD1枚目の冒頭「Overture (Original Version)」は、ファンファーレによるダイナミックなイントロに続いてオリエンタルでリリカルなタッチの主題へと展開する序曲で、このオリエンタルなタッチの主題(フレンチーとメイリーのラヴ・テーマ)は「Maily Appears」「Frenchie's Death」でも登場する。続く「Main Title」は、パーカッションにドラマティックな主題が重なるメインタイトル。「Getting Acquainted」は、ジェントルでリリカルなジェイクとシャーリー(バーゲン)のラヴ・テーマ。「The San Pablo」「Death of a Coolie」は、静かにドラマティックな曲。「Hello, Engine」「Chang-Sha Dock」「Not In Vain」「Chang-Sha (Entr'acte)」「Overture」「Jake and Shirley」「A Matter of Ideals」「The Wedding」「Restless Months」は、ラヴ・テーマのバリエーション。「Trial Run – Part I」「Trial Run – Part II」は、ラヴ・テーマの躍動的でオリエンタルなタッチのアレンジメント。「The Student」は、オリエンタルでジェントルなタッチの曲。「Repel Boarders」は、ラヴ・テーマを織り込んだダイナミックなサスペンスアクション音楽。「Death of a Thousand Cuts」は、ダークでドラマティックなタッチの曲。「Unfriendly Welcome」「Coolies Jump Ship」は、ダイナミックなサスペンス音楽。「My Secret」「Maily's Abduction」「Fire Aft!」は、ゴールドスミスの個性が出たダイナミックなサスペンスアクション音楽。「Final Mission / Commence Firing」「The Sniper」は、ミリタリスティックなサスペンスアクション音楽。「Almost Home–Part I」は、ドラマティックなタッチ。「Night Mission」は、抑制されたサスペンス音楽。「End Title (Almost Home–Part II)」「Cast Credits (Almost Home–Part III)」は、ラヴ・テーマを織り込んだドラマティックなエンドタイトルとクレジット。ラストの「And We Were Lovers (Exit Music)」は、ラヴ・テーマのリリカルなアレンジメントで締めくくる。

当初本作のスコアを担当するはずだったアレックス・ノースが座骨神経痛のために降板したため、フォックスは契約上の優先条項を利用してMGM製作の「グラン・プリ」を担当しようとしていた当時37歳のジェリー・ゴールドスミスを呼び戻し、本作の仕事をアサインした。1960年代にゴールドスミスが手がけた代表的なスコアの1つで、上述の通り彼はこのスコアでアカデミー賞の作曲賞にノミネートされている。
(2022年12月)

Jerry Goldsmith

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