エル ELLE ELLE

作曲・指揮:アン・ダッドリー
Composed and Conducted by ANNE DUDLEY

演奏:ロンドン室内管弦楽団
Performed by the Chamber Orchestra of London

(仏Sony Classical / 88985361012) 2017

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2016年製作のフランス=ドイツ=ベルギー合作映画(日本公開は2017年8月)。監督は「ロボコップ」(1987)「トータル・リコール」(1990)「ショーガール」(1995)「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997)「ブラックブック」(2006)「ポール・ヴァーホーヴェン/トリック」(2012)等のポール・ヴァーホーヴェン(1938〜)。出演はイザベル・ユペール、ロラン・ラフィット、アンヌ・コンシニー、シャルル・ベルリング、ヴィルジニー・エフィラ、ジュディット・マグレ、クリスチャン・ベルケル、ジョナ・ブロケ、アリス・イザーズ、ヴィマーラ・ポン、ラファエル・ラングレ、アルチュール・マゼ、リュカ・プリゾ、ユーゴ・コンゼルマン、ステファーヌ・バク他。「ベティ・ブルー/愛と激情の日々」(1986)「(未公開)ブルー・チェイス・ブルー」(1986)「(未公開)愛の犯罪者」(2013)等のフィリップ・ディジャン(1949〜)の原作『エル ELLE』を基にデヴィッド・バークが脚本を執筆。撮影はステファーヌ・フォンテーヌ。

新鋭ゲーム会社Nソフトウェアの社長として辣腕を振るうミシェル・ルブラン(ユペール)は、ある日ひとり暮らしをしている自宅で覆面をした男に襲われる。男が去ると、警察にも通報せず、何事もなかったかのように振る舞うミシェル。その後も、差出人不明の嫌がらせメールが届き、留守中に何者かが侵入した形跡が見つかるなど、不審な出来事が続く。自分の生活リズムを把握しているかのような犯行に、周囲に疑惑の目を向けるミシェル。父親にまつわる過去の衝撃的な事件から、警察との関わりを避ける彼女は、自ら犯人を探し始めるが……。

ヴァーホーヴェン監督が得意とするエロティック・スリラーで、全米最低映画を決めるラジー賞の候補になりそうな題材(「ショーガール」でラジー賞のワースト監督賞を受賞したヴァーホーヴェンは、自ら会場でトロフィーを受け取る余裕を見せて大喝采を浴びた)だが、逆に名誉ある賞を数多く受賞している。製作費は約900万ユーロ。2016年度カンヌ国際映画祭コンペティション出品作品。同年のアカデミー賞の主演女優賞、英国アカデミー賞の外国語映画賞、ヨーロッパ映画賞の作品賞、監督賞、女優賞にノミネートされ、ゴールデン・グローブの外国語映画賞、女優賞(ドラマ)を受賞している他、主演のイザベル・ユペールが全米批評家協会賞の主演女優賞、NY批評家協会賞の女優賞、LA批評家協会賞の女優賞、インディペンデント・スピリット賞の主演女優賞を受賞している。また、同年のセザール賞の監督賞、助演男優賞、助演女優賞、有望若手男優賞、脚色賞、音楽賞、撮影賞、音響賞、編集賞にノミネートされ、作品賞、主演女優賞を受賞している。

音楽は「ブラックブック」(2006)でもポール・ヴァーホーヴェン監督と組んでいるイギリスの作曲家アン・ダッドリー(1956〜)。「Main Titles」は、メランコリックかつミステリアスで情感豊かなタッチのメインの主題。「Little Psycho」「Parole Denied」「In Control」は、ドラマティックなサスペンス音楽。「Unknown Caller」「A Woman Your Age」「The Book, the Bell, the Candle」は、ダークなタッチのサスペンス音楽。「I Stopped Lying」「The Shutters」は、ドラマティックでミステリアスな曲。「Primal Scream」は、ドラマティックなタッチからダイナミックなサスペンス音楽へ。「It Was Necessary」「A Tortured Soul」も、ダークでダイナミックなサスペンス音楽。「Ash Girl」は、サスペンス調から後半ドラマティックなタッチへ。「Just Good Friends」は、ピアノをフィーチャーしたジェントルなタッチの曲。「A Prowler」は、ミステリアスなタッチから後半ダイナミックなサスペンス音楽へ。「Fresh Paint」は、ピアノをフィーチャーしたドラマティックな曲。「A Different Ending」は、メインの主題のリプライズで締めくくる。全体にダークでセンシュアルなタッチのサスペンス・スコア。
(2020年5月)

Anne Dudley

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