花のようなエレ  HELLE

作曲・指揮:フィリップ・サルド
Composed and Conducted by PHILIPPE SARDE 

(カナダDisques Cinemusique / DCM 160)

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1972年製作のフランス映画(日本公開は1973年5月)。監督は「素直な悪女」(1956)「危険な関係」(1959)「血とバラ」(1961)「バーバレラ」(1967)「世にも怪奇な物語」(1967)「課外教授」(1971)「さよなら夏のリセ」(1983)等のロジェ・ヴァディム(1928〜2000)。出演はグウェン・ウェルズ、ディディエ・オードパン、ブリューノ・プラダル、ロベール・オッセン、マリア・モーバン、ジャン=クロード・ブーイヨン、マリア・シュナイダー、ディアーヌ・ヴェルノン、アニック・ベルジェ、ジャッキー・ブランショ、ドロティー・ブランク、アニエス・カプリ、パスカル・クーザン、ミシェル・ダキン他。ロジェ・ヴァディムの原案を基にジャン・マイヤンとモニク・ランジェが脚本を執筆。撮影はクロード・ルノワール。南アルプスの寒村に帰省した少年ファブリスと、ギリシャ神話の女神と同じ名をもつ美少女エレの恋を描くドラマで、ロジェ・ヴァディム監督の自伝的要素が強い作品。1951年の夏、南仏オート・サボワの村に休暇で戻った17歳のファブリス(オードパン)は、年下の男フランソワ(ブーイヨン)との情事にふける母エレーヌ(モーバン)と、インドシナ戦争から帰還して酒浸りになっている兄ジュリアン(プラダル)と再会するが、そんな実家の現状に耐えられず、雄大なアルプスの自然の中を歩き廻るようになる。森のはずれにあるクレベール(オッセン)という男の家に住むエレ(ウェルズ)という精神薄弱の少女と出会ったファブリスは、その無垢な美しさに惹かれてゆく。だが、ジュリアンは、エレが多くの村人に身をまかしており、善悪の区別のつかない彼女はそのことを何とも思っていないと暴き、自らもエレを襲おうとした後で、滝に飛び込んで自殺してしまう……。

音楽はフィリップ・サルド(1948〜)が作曲しており、これは彼がキャリアの初期、27歳の時に手がけたスコア。「Generique debut」は、ギターとストリングスによる、ややメランコリックでリリカルなメインの主題で、スコア全体がこの主題の様々なアレンジメントにより構成されている。「Helle」は、アン・ロンベールのスキャットによるメインの主題。「Jazz en trois mouvements」は、ライトなタッチからダイナミックなタッチへと展開する3楽章のジャズ。「Les retrouvailles」「Ballade」は、ギターとピアノをフィーチャーしたメインの主題。「La folie」「La boite de nuit」は、ワイルドで幻想的なタッチのロックで、いかにも70年代風。「Helle et Fabrice」はフルートとピアノ、「Helle se maquille」はコーラス、「Le retour de Fabrice」「Sur le pont」はギターとフルートをフィーチャーしたメインの主題のアレンジメント。「La messe」は、オーケストラとコーラス(ジャック・グリムベール合唱団)によるドラマティックな曲で、サルドらしい叙情的なタッチ。「Jazz en deux mouvements」は、ダイナミックなタッチからジェントルなタッチへと展開する2楽章のジャズ。「Resurrection」「Finale avec choeur」は、ストリングス、ピアノ、フルート、ギターをフィーチャーしたメインの主題で、フィナーレはコーラスによりドラマティックに締めくくる。
このスコアは公開当時フランスのBarclayレーベルと日本のSeven Seasレーベルから3曲入りのEP盤が出ていたが、今回のカナダDisques CinemusiqueレーベルによるCDはコンプリート・スコアの初リリースで、500枚限定プレス。
(2015年4月)

Philippe Sarde

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