素晴らしき哉、人生!  IT'S A WONDERFUL LIFE

作曲・指揮:ディミトリ・ティオムキン
Composed and Conducted by DIMITRI TIOMKIN

(米Kritzerland / KR 20028-2)

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1946年製作のアメリカ映画(日本初公開は1954年2月)。製作・監督は「或る夜の出来事」(1934)「オペラハット」(1936)「失はれた地平線」(1937)「スミス都へ行く」(1939)「群衆」(1941)「毒薬と老嬢」(1944)「ポケット一杯の幸福」(1961)等のフランク・キャプラ(1897〜1991)。出演はジェームズ・ステュワート、ドナ・リード、ライオネル・バリモア、トーマス・ミッチェル、ヘンリー・トラヴァース、ボーラ・ボンディ、フランク・フェイレン、ウォード・ボンド、グロリア・グレアム、H・B・ワーナー、トッド・カーンズ、サミュエル・S・ハインズ、メアリー・トリーン、フランク・アルバートソン、ヴァージニア・パットン他。フィリップ・ヴァン・ドーレン・スターンがクリスマスカード用に書いた短編小説『The Greatest Gift』を、フランク・キャプラとフランセス・グッドリッチ、アルバート・ハケット、ジョー・スワーリングが脚色。撮影はジョセフ・ウォーカー、ジョセフ・バイロックとヴィクター・ミルナー。小さな町ベタフォードで父の営む零細金融会社を継いで倹しく暮らすジョージ・ベイリー(ステュワート)には、町を飛び出してもっと大きな仕事を手がけたいという夢があるが、人生の様々な転機でツキに見放され実現できないでいる。町の銀行家ポッター(バリモア)は、そんなジョージを目の仇にして、事あるごとに彼に圧迫を加えていた。善意に溢れたジョージは町の人々からも愛されるが、逆境は続き、ポッターの策略により会社の経営に破綻をきたすほどの大金を失った彼は、絶望のどん底に落ち、雪の降る中を冷たい河に身を投げて自殺を図ろうとする。一方で、天国から彼の生涯を見ていた天使たちは、見習い中の天使クラレンス(トラヴァース)を地上に送り込み、ジョージを助けることが出来れば、真の天使の証である羽根を与えてやるという。ジョージを自殺から救ったクラレンスは、「自分などこの世に生まれてこなければよかった」と投げやりになるジョージを説得するために、あることを思いつく……。洋画・邦画を問わず、この名作の設定を模倣した映画がその後数多く作られているが、本作の感動を超えるものはない。公開時の興行成績は不調だったが、その後アメリカでは多くの人々の支持を得て、現在でも毎年クリスマスシーズンにはテレビ放映され続けている。フランク・キャプラ、ウィリアム・ワイラー、ジョージ・スティーヴンスの3監督が協力して設立したリバティ・フィルムスの製作。1946年度アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞、編集賞、録音賞にノミネートされ、同年のゴールデン・グローブの監督賞を受賞している。

音楽はフランク・キャプラ監督と「失はれた地平線」(1937)「我が家の楽園」(1938)「スミス都へ行く」(1939)「群衆」(1941)等でも組んでいるディミトリ・ティオムキン(1899〜1979)。監督のキャプラが編集時に多くの改変を行ったため、結果としてティオムキンが作曲したスコアの一部は削除され、別の作曲家(アルフレッド・ニューマン、リー・ハーライン、リース・スティーヴンス、ロイ・ウェッブ等)が別の映画に書いたストック音楽に置き換えられたりした。このKritzerlandレーベルのCDは、ティオムキンがこの映画のために作曲したオリジナルスコアの初リリースで、現存する音源から新たにレストレーションされたもの。「Main Title / Heaven」は、ジョン・ホッジス作曲の明るく快活なカントリー曲「バッファロー・ギャルズ(Buffalo Gals)」をアレンジしたメインタイトルから、ジョン・オブ・レディング作曲とされる「神のみ子は今宵しも(Adeste Fideles)」、グノーの「アヴェ・マリア」等を織り込んだ幻想的なタッチへと展開。「Ski Run」も、「バッファロー・ギャルズ」を織り込んだ躍動的な曲。「Death Telegram」は、トラジックなタッチの曲。「Gower's Deliverance」「Father's Death」「Search for Money」等は、ドラマティックな曲。「George and Dad」「Dilemma」は、アメリカの民謡「赤い河の谷間(Red River Valley)」を織り込んだ曲。「Love Sequence」は、ジェントルで美しいラヴ・テーマで、この主題は「Wedding Cigars」「George Lassoes Stork」等でも登場する。「Bank Crisis」は、ダイナミックでドラマティックな曲。「Potter's Threat」「Pottersville Cemetery」は、ダークでストイックなタッチの曲。「Dankgebet / This Is the Army, Mr. Jones」は、明るくジェントルな民謡「Dankgebet」からミリタリスティックなファンファーレに続いてアーヴィング・バーリン作曲の勇壮なマーチ「This Is the Army, Mr. Jones」、そして荘厳な合唱へと展開。「Uncle Billy's Blunder」は、サスペンス音楽。「Clarence's Arrival」も、ダークなサスペンス音楽から後半ドラマティックに盛り上がる。「George Is Unborn」は、女声コーラスを織り込んだ幻想的な曲。「Haunted House」は、ミステリアスでドラマティックな曲。「Wrong Mary Hatch / The Prayer」は、ラヴ・テーマを織り込んだドラマティックな曲。「A Wonderful Life (original finale)」は、ジェントルなイントロから「きよしこの夜」「神のみ子は今宵しも」「ジングルベル」といったクリスマスソングとラヴ・テーマを交互に登場させ、最後はベートーヴェン作曲の交響曲第9番の「歓喜の歌」の主題で締めくくる感動的なフィナーレ。ラストの「Auld Lang Syne / End Title」は、「オールド・ラング・サイン(蛍の光)」に続いて「バッファロー・ギャルズ」のビッグバンド演奏によるエンドタイトルに展開。最後にボーナストラックとして、ラヴ・テーマのヴォーカル版(フレデリック・ハーバート作詞)「It's a Wonderful Life (vocal)」や、メンデルスゾーン作曲の結婚行進曲「Wedding March / Big Band」、スコアの代替テイク4曲を収録。
この作品は、リコンストラクトされたスコアのデヴィッド・ニューマン指揮ロイヤル・フィルの(見事な)演奏による新録音が1988年にTelarcレーベルからリリースされていた(米Telarc / CD-88801)が、この米KritzerlandレーベルのCDはサントラ音源の初リリースで1200枚限定プレス。
(2015年1月)

Dimitri Tiomkin

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