突撃隊 HELL IS FOR HEROES

作曲・指揮:レナード・ローゼンマン
Composed and Conducted by LEONARD ROSENMAN

アルカトラズからの脱出 ESCAPE FROM ALCATRAZ

作曲・指揮:ジェリー・フィールディング
Composed and Conducted by JERRY FIELDING

(米Intrada / Intrada Special Collection Vol.236)

 ★TOWER.JPで購入


「(未公開)ボディ・スナッチャー/恐怖の街」(1956)「殺し屋ネルスン」(1957)「殺人者たち」(1964)「刑事マディガン」(1967)「マンハッタン無宿」(1968)「真昼の死闘」(1969)「白い肌の異常な夜」(1971)「ダーティハリー」(1971)「突破口!」(1973)「ドラブル」(1974)「ラスト・シューティスト」(1976)「テレフォン」(1977)等で知られる犯罪アクション映画の名手ドナルド(ドン)・シーゲル監督(1912〜1991)がパラマウントで製作した2作品のスコアをカップリングにしたCD。

「突撃隊(HELL IS FOR HEROES)」は、1961年製作のアメリカ映画。出演はスティーヴ・マックィーン、ボビー・ダーリン、フェス・パーカー、ハリー・ガーディノ、ジェームズ・コバーン、ボブ・ニューハート、ニック・アダムス、スティーヴン・フェリー、マイク・ケリン、サイモン・プレスコット、ジョセフ・フーヴァー、ロバート・フィリップス、ビル・ムリキン、L・Q・ジョーンズ、ドン・ハガーティ他。ロバート・ピロッシュの原案を基にロバート・ピロッシュとリチャード・カーが脚本を執筆。撮影はハロルド・リップスタイン。第二次大戦中の1944年、ジーグフリード要塞線。かつては十字勲章を授けられた英雄だったが泥酔暴行で降格されたリーズ(マックィーン)は、休暇に向かう途中で最前線に戻されたラーキン軍曹(ガーディノ)率いる小隊に加わる。その任務は要塞線主要部の閉鎖で、後続部隊到着までドイツ軍を釘づけにしなければならなかった。彼らはドイツ軍を騙して小隊を大部隊に見せかけていたが、敵の将校斥候によって部隊の全貌が発覚してしまう。リーズは敵が一挙に襲撃してくる前に先手を打って要塞を攻撃すべきと提案する……。ラストでリーズが爆薬を抱いて要塞に躍り込み自爆攻撃した後も、何事もなかったかのように戦闘が続いていくというハードボイルドなエンディングがいかにもシーゲルらしい。日本でテレビ放映された際の日本語吹替キャストは、スティーヴ・マックィーン(内海賢二)、ボビー・ダーリン(広川太一郎)、フェス・パーカー(小林恭治)、ハリー・ガーディノ(小林 修)、ジェームズ・コバーン(小林清志)、ボブ・ニューハート(野田圭一)、ニック・アダムス(野島昭生)、マイク・ケリン(渡部 猛)他で、この日本語音声は日本盤DVDにも収録されている。

音楽はレナード・ローゼンマン(1924〜2008)が作曲。「Main Title」は、ダイナミックでサスペンスフルなブラス主体のメインタイトル。戦争アクション映画の定石である単純に勇壮なマーチではない武骨で前衛的なタッチがローゼンマンらしい。「Reese」「Off Limits Bar」「Belligerent Reese」「Homer's Disappointment」は、抑制されたタッチの曲。「Back to the Line」「Battle Shock and Reese's Rage」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽。「The Mine Field, Part 1」「The Mine Field, Part 2」は、ローゼンマン作曲の「続・猿の惑星」のスコアに通ずるアブストラクトなタッチのサスペンス音楽。「Kennedy's Speech / End Title」は、ストイックで抑制されたマーチによるエンドタイトル。


「アルカトラズからの脱出(ESCAPE FROM ALCATRAZ)」は、1979年製作のアメリカ映画。出演は、クリント・イーストウッド、パトリック・マクグーハン、ロバーツ・ブロッサム、ジャック・ティボー、フレッド・ウォード、ポール・ベンジャミン、ラリー・ハンキン、ブルース・M・フィッシャー、フランク・ロンツィオ、フレッド・スタッスマン、デヴィッド・クライアー、マディソン・アーノルド、ブレア・バロウズ、ボブ・バルハチェット、ダニー・グローヴァー他。J・キャンベル・ブルースの原作を基にリチャード・タッグルが脚本を執筆。撮影はブルース・サーティース。脱獄不可能と言われたサンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ刑務所からの脱出を試みた3人の男たちを描く、実話に基づいたサスペンス映画。1960年1月18日の深夜、囚人フランク・モリス(イーストウッド)がアルカトラズ島の刑務所へ護送されてきた。問題囚ばかりが収容されているこの刑務所は、冷酷な所長(マクグーハン)の下で厳重な警備体制が取られていた。モリスは、ネズミをペットにしているリトマス(ロンツィオ)、図書館の係員をしている黒人のイングリッシュ(ベンジャミン)、絵を描くのが趣味のドク(ブロッサム)たちと親しくなる一方、因縁をつけてきたウルフ(フィッシャー)とは対立する。やがてモリスは、別の刑務所で一緒だったアングリン兄弟(ティボー、ウォード)と出会い、脱走計画を実行に移す決心を固める……。ほとんどドキュメンタリーのような淡々としたタッチだが、全編をピンと張り詰めた緊張感が支配するシーゲル監督の職人的演出が秀逸な傑作。紙粘土で造ったダミーの人形が看守にばれそうになるシーンのサスペンスなどは強烈。日本でテレビ放映された際の日本語吹替キャストは、クリント・イーストウッド(山田康雄)、パトリック・マクグーハン(納谷悟朗)、ポール・ベンジャミン(小林清志)、フランク・ロンツィオ(島 宇志夫)、ロバーツ・ブロッサム(杉田俊也)、ジャック・ティボー(仲木隆司)、フレッド・ウォード(笹岡繁蔵)、ラリー・ハンキン(嶋 俊介)、フレッド・スタッスマン(大久保正信)、エド・ヴァスガージアン(池田 勝)、ブルース・M・フィッシャー(西尾 徳)、デヴィッド・クライヤー(清川元夢)他だった。

音楽はクリント・イーストウッドとのコラボレーションが多いジェリー・フィールディング(1922〜1980)が作曲しており、これはフィールディングが唯一ドン・シーゲル監督と組んだスコア。「Main Title」は、マーチ調のスネアドラムを織り込んだダークで不気味なメインタイトル。以降、「Welcome to Alcatraz」「Solitary and Home Again」「Welding in the Cell / Digging the Grill」「Wedge and 1st Montage」「Utility Corridor」「Trial Run」「Nosey Cop」等、アブストラクトで無機質なサスペンス音楽が連続するが、主題らしい主題がなく、ほとんど効果音的。意図的に再生スピードも変化させており、実に不気味。「Carpenter Shop」は、所長から絵画を禁止されたドクが手斧で自分の指を切り落とすシーンのハイテンションなサスペンス音楽。後半は脱獄シーンの「The Pipe」「Bye Boy (film version)」「Wedge and 1st Montage」「Beginning of Escape」「To the Finish Line」といった緊張感のあるサスペンス音楽が連続。「End Credits (film version)」は、冒頭と同様マーチ調のスネアドラムを織り込んだ抑制されたエンドクレジット。最後にボーナストラックとして「Welcome to Alcatraz (unused)」「Bye Boy (original version)」「End Credits (original version)」の別バージョンを収録。劇伴に徹したミニマルなスコアだが、劇中での効果は圧倒的で、この上なく機能的なスコア。
いずれもコンプリート・スコアの初CD化で、限定プレス。
(2013年3月)

Leonard Rosenman

Jerry Fielding

Soundtrack Reviewに戻る


Copyright (C) 2013  Hitoshi Sakagami.  All Rights Reserved.