英国王のスピーチ THE KING'S SPEECH

作曲・指揮:アレクサンドル・デスプラ

Composed and Conducted by ALEXANDRE DESPLAT

(米Decca / B0015064-02)

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2010年製作のイギリス=オーストラリア=アメリカ合作映画(日本公開は2011年2月26日)。監督は「(TV)第一容疑者 姿なき犯人」(2003)「(TV)エリザベス1世 〜愛と陰謀の王宮〜」(2005)「(未公開)くたばれ!ユナイテッド -サッカー万歳!-」(2009)等のトム・フーパー。出演はコリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター、ガイ・ピアース、ティモシー・スポール、デレク・ジャコビ、ジェニファー・イーリー、マイケル・ガンボン、クレア・ブルーム、イヴ・ベスト、アンソニー・アンドリュース、ロジャー・ハモンド、カラム・ギティンズ、ドミニク・アップルホワイト他。脚本はデヴィッド・サイドラー、撮影はダニー・コーエン。幼少時からの吃音に悩む英国王ジョージ6世が自らを克服し、国民に愛される王になるまでを描く実話。幼い頃から吃音症(発語時に言葉が連続して発せられるなど円滑に話せない疾病)だったジョージ6世(ファース)は、英国王ジョージ5世(ガンボン)の次男という華々しい出生にもかかわらず人前に出ることを嫌う内気な性格だった。ジョージは妻のエリザベス(ボナム=カーター)に付き添われて、何人もの言語聴覚士を訪ねるが、一向に改善しない。ある日、エリザベスはスピーチ矯正の専門家ライオネル・ローグ(ラッシュ)のもとへ夫を連れていく。一方、ジョージ5世が亡くなって国王に即位した長男のエドワード8世(ピアース)が、離婚暦のあるウォリス・シンプソン(ベスト)との恋を選んで退位し、ジョージは望まぬ国王の座に就くことに。王位継承評議会のスピーチでも失敗したジョージは、ライオネルのユニークな指導により治療を続けていく……。主演のコリン・ファースが2010年度ゴールデン・グローブの男優賞(ドラマ)、NY批評家協会賞の男優賞、LA批評家協会賞の男優賞、放送映画批評家協会賞の主演男優賞を受賞、ジェフリー・ラッシュが全米批評家協会賞の助演男優賞を受賞しているほか、2010年度アカデミー賞の作品賞、主演男優賞(ファース)、助演男優賞(ラッシュ)、助演女優賞(ボナム=カーター)、監督賞、脚本賞、撮影賞、作曲賞、美術賞、衣装デザイン賞、音響賞(調整)、編集賞にノミネート され、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞を受賞。“歴史上の人物”“イギリス人キャスト”という要素に加え、製作総指揮にワインシュタイン兄弟が参加しており、いかにも“アカデミー賞仕様”といった印象の作品だが、主演のファース、ラッシュ、ボナム=カーターはいずれも名演。

音楽は、今やハリウッドで最も売れている作曲家の1人となったフランス人のアレクサンドル・デスプラ「Lionel and Bertie」は、ジェントルなストリングスとピアノ(デイヴ・アーチ)によるライオネルとバーティ(ジョージ6世)の主題。「The King's Speech」は、快活でジェントルなピアノによるメインの主題。「My Kingdom, My Rules」は、メランコリックな主題からメインの主題へ展開。「The King is Dead」「Memories of Childhood」「Queen Elizabeth」も、メランコリックな曲。「King George VI」は、抑制されたサスペンス調の曲。「The Royal Household」「The Rehearsal」は、メインの主題のバリエーション。「Fear and Suspicion」は、メランコリックな主題から後半はピアノによるメインの主題へ。「The Threat of War」は、サスペンス調の曲。「Speaking Unto Nations (Beethoven Symphony No 7 - II)」は、クライマックスでナチスドイツとの開戦を前にして不安に揺れる国民の心をひとつにするために、ジョージ6世が世紀のスピーチに挑むシーンの音楽で、ここは(映画で使われることの多い)ベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章(テリー・デイヴィス指揮ロンドン交響楽団)が流れる。ラストの「Epilogue (Beethoven Piano Concerto No 5 "Emperor" - II)」も、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」第2楽章によるエピローグ。上質なドラマにふさわしい気品のあるスコア。
(2011年2月)

Alexandre Desplat

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