ケンタッキー人(新録音) THE KENTUCKIAN

作曲:バーナード・ハーマン
Composed by BERNARD HERRMANN

指揮:ウィリアム・ストロンバーグ
Conducted by WILLIAM STROMBERG

演奏:モスクワ交響楽団
Performed by the Moscow Symphony Orchestra

(米Tribute Film Classics / TFC-1004)


1955年製作のアメリカ映画。監督・主演は「殺人者」(1946)「地上より永遠に」(1953)「ヴェラクルス」(1954)「成功の甘き香り」(1957)「OK牧場の決斗」(1957)「許されざる者」(1959)「エルマー・ガントリー/魅せられた男」(1960)「終身犯」(1961)「山猫」(1963)「大列車作戦」(1964)「泳ぐひと」(1968)「大空港」(1970)「カサンドラ・クロス」(1976)「合衆国最後の日」(1977)「フィールド・オブ・ドリームス」(1989)等、数多くの出演作で知られるアメリカの名優バート・ランカスター(1913〜1994)で、彼はこの「ケンタッキー人」の他にも「(未公開)真夜中の男」(1974)で共同監督を手がけている。共演はダイアン・フォスター、ウォルター・マッソー、ダイアナ・リン、ジョン・マッキンタイア、ウナ・マーケル、ジョン・キャラディーン、ジョン・リテル、リス・ウィリアムス、エドワード・ノリス、ドナルド・マクドナルド、クレム・ベヴァンス、リー・エリクソン、リサ・フェラデイ、ジェームズ・グリフィス他。フェリックス・ホルトの原作『The Gabriel Horn』を基に「シェーン」「大西部への道」等の原作者A・B・ガスリー・Jrが脚本を執筆。撮影はアーネスト・ラズロ。製作はランカスターのエージェントを務め、共同で独立プロダクションを設立したハロルド・ヘクト。1820年代のアメリカ、ケンタッキー州。何世代も続くフロム一家との確執に見切りをつけ、息子のリトル・イーライ(マクドナルド)を連れてケンタッキーからテキサスへと移住することにしたイライアス・ウェイクフィールド(ランカスター)は、その過程で女中のハンナ(フォスター)を雇い、女教師のスージー(リン)と知り合う……。バート・ランカスターの唯一の単独監督作品だが、作品の評価、興行成績ともに芳しくなく、その後彼は監督業にあまり興味を示さなかったという。

音楽はバーナード・ハーマンが作曲しているが、サスペンスやファンタジーのジャンルで数々の傑作スコアを残している彼としては珍しい大らかな“アメリカーナ”音楽。10数秒から3分弱程度の長さの48の曲が連続するが、途切れのない1曲の長い交響詩のように演奏・編集されている。「Prelude」は、4本のホルンによる短いファンファーレから躍動的なメインの主題へと展開する前奏曲。1930年代にハーマンがラジオ番組でA・E・ハウズマンの詩に付けた主題を流用しており、ここではアメリカ大西部を表現しているが、元はイギリスの田園地帯を描写した主題だったという。「The Stagecoach」は、牧歌的なタッチの曲。「Daydreaming I」「The Forest」「Morning and Night」「Daydreaming II」等は、リリカルで美しい曲。「Decker」「The Fromes」「The Key」「Anger」等は、ハーマンらしいダークなサスペンス音楽。「Trio」「The Pearl」「Miss Susie」「The Letter」「The Loafer」「Supper」「The Vigil」「Confession」「The Boy and Dog」「The Reproach」「Boyhood's End」等は、ジェントルなタッチの曲。「The Whip」「The Boy's Call (Horn)」は、メインのファンファーレのリプライズ。「Hannah」は、ドラマティックなハンナの主題。「The Steamboat」「Welcome Aboard」「River Queen」「The Captain」「Scherzo」等は、躍動的でダイナミックな曲。「Saloon Piano」「The Gamblers (Piano)」は、酒場のピアノ曲。「The Drunk」は、ダークなタッチ。「The Rope」「The Wheel」「The Still」「A-waiting」「The Rifle」は、重厚なサスペンス音楽。クライマックスの「The Body」「The Kill」も、ハーマンらしい重厚でダイナミックな曲。最後の「Finale」は、ダークな主題からリリカルな主題へと展開し、締めくくる。全体を通して、父親と息子とのドラマを表現したジェントルな主題が印象的なスコア。このCDはハーマンによるコンプリート・スコアをリコンストラクトしてモスクワで新録音したもので、同じくハーマン作曲の「WILLIAMSBURG: THE STORY OF A PATRIOT」(1956)も収録。こちらも明るく躍動的で美しいスコア。
(2008年10月)

Bernard Herrmann

Soundtrack Reviewに戻る


Copyright (C) 2008  Hitoshi Sakagami.  All Rights Reserved.