ガルシアの首 BRING ME THE HEAD OF ALFREDO GARCIA

キラー・エリート THE KILLER ELITE

作曲・指揮:ジェリー・フィールディング
Composed and Conducted by JERRY FIELDING

(米Intrada / Intrada Special Collection Vol.13)


サム・ペキンパー監督と作曲家のジェリー・フィールディング(いずれも故人)のコラボレーション作品2本のスコアをカップリングにしたサントラ盤。

「ガルシアの首(BRING ME THE HEAD OF ALFREDO GARCIA)」は1974年製作のアメリカ映画で、出演はウォーレン・オーツ、イセラ・ヴェガ、ロバート・ウェッバー、ギグ・ヤング、ヘルムート・ダンティーン、エミリオ・フェルナンデス、クリス・クリストファーソン、チャノ・ウルエタ、ホルヘ・ルセック、ドン・レヴィ、ドニー・フリッツ、チャロ・ゴンザレス、エンリケ・ルセーロ他。フランク・コワルスキーとサム・ペキンパーの原案を基にゴードン・ドーソンとペキンパーが脚本を執筆。撮影はアレックス・フィリップス・Jr。メキシコの大地主エル・ジェフェ(フェルナンデス)は、愛娘を妊娠させたアルフレッド・ガルシアの首に賞金を懸ける(映画の原題「アルフレッド・ガルシアの首をもって来い」はここでの彼のセリフ)。酒場のピアニスト、ベニー(オーツ)はガルシアが既に死んでいることを知り、彼の首を手に入れて賞金を得るため、恋人のエリータ(ヴェガ)と共にガルシアが埋葬されている故郷に向かうが、同じく賞金を狙う男たちがベニーの後を追う・・。ペキンパー後期の傑作の1つで、特にベニーとエリータの切ないラブストーリーの描写が彼の個性を感じさせる。日本で発売されているDVDには、TV放映時の日本語吹替が収録されているが、その時の吹替キャストはオーツ(内海賢二)、ヴェガ(此島愛子)、ウェッバー(小林清志)、ヤング(村越伊知郎)、ダンティーン(寺島幹夫)、フェルナンデス(神田隆)他だった。

ジェリー・フィールディングのスコアは、メキシカン・フレーバーを帯びたオーケストラによるサスペンス音楽だが、奈落の底に転げ落ちていく主人公ベニーの悲痛な心理を的確に描写した見事なアンダースコアとなっている。「Bring It to Me (Main Title)」は、ギターによるイントロに続いてファンファーレ風のブラスをアクセントにしたメインタイトルが展開。「Gathering Information」はメキシコ民謡風の明るいタッチ。「Marriage Plans」は哀愁を帯びた繊細で美しい曲。「Bennie's Revenge」はギターとオーケストラによるサスペンスフルなタッチ。「Killer's Rhapsody」は、やはり民俗音楽風のリリカルで印象的な曲。「Hotel Room」はサスペンス調からジェントルなタッチへ。「Requiem for Alfredo」はトラジックなレクイエム。「Night Dig」「Goodbye Elita」「Getting a Head」は、ベニーとエリータが夜中にガルシアの墓を暴いて首を手に入れようとするシーンのサスペンス調の音楽。「Road Kill」「Massacre」は、組織の殺し屋たち(ウェッバー、ヤング)との銃撃戦シーン等のハイテンションな暴力音楽。「El Jefe」はメキシコ民謡風の美しい曲。「End Titles」は美しくドラマティックなエンドタイトル。

「キラー・エリート(THE KILLER ELITE)」は1975年製作のアメリカ映画で、出演はジェームズ・カーン、ロバート・デュヴァル、アーサー・ヒル、ボー・ホプキンス、マコ岩松、バート・ヤング、ギグ・ヤング、トム・クランシー、ティアナ・アレクサンドラ、ウォルター・ケリー、ケイト・ヘフリン、ソンドラ・ブレイク、キャロル・マロリー、ヘルムート・ダンティーン他。ロバート・ロスタンドの原作「Monkey in the Middle」を基にマーク・ノーマンとスターリング・シリファントが脚本を執筆。撮影はフィリップ・H・ラスロップ。CIAの依頼により暗殺等を行う組織“コムテグ”のエージェント、マイク・ロッケン(カーン)は同僚のジョージ・ハンセン(デュヴァル)に裏切られ、肘と膝を撃たれて瀕死の重傷を負う。リハビリによって復帰したマイクは、台湾の政治家をアメリカ国外へ脱出させる任務につくが、彼らを謎の殺し屋集団が襲い、その中には宿敵ジョージの姿もあった……。ペキンパーの作品中でも標準以下の出来で、ニンジャが突然登場したりする怪作。

映画は凡作でもジェリー・フィールディングのスコアは素晴らしい。「Main Title」はミリタリスティックでダイナミックなメインタイトル。フィールディングの作品中でも、最も単純にかっこいいメインタイトルの1つだろう。「He's Your Buddy」「Bethlehem Steelyard」等はサスペンス調。「On the Stairs」「Love Theme」はリリカルなトランペット・ソロをフィーチャーしたジャズ。「Sailing, Sailing」はフィールディングらしいドラマティックでハイテンションなオーケストラ音楽。「Hand to Hand」は彼の本領発揮のパーカッシヴでダイナミックなアクション音楽。「Sword to Sword」はオリエンタルなタッチにちょっと違和感がある。「End Titles」も実にかっこいいエンドタイトル。

サム・ペキンパージェリー・フィールディング「ワイルドバンチ」(1969)「わらの犬」(1971)「ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦」(1972)「ガルシアの首」(1974)「キラー・エリート」(1975)「コンボイ」(1978)で組んでいるが、いずれも妥協を許さない激しい気性の持ち主で、互いの強い信頼感と尊敬の念により固いコラボレーション関係を築いていたが、何度かの不幸な出来事により、キャリアの後期はほとんど訣別状態にあった。「ゲッタウェイ」(1972)では、フィールディングが書いたスコア(彼自身は自らのベスト・スコアの1つと考えていた)が、主演のスティーヴ・マックイーンの強い意向によりクインシー・ジョーンズのスコアにリプレースされてしまった(ペキンパーはフィールディングの擁護にまわり、“ヴァラエティ”誌に「フィールディングの貢献に感謝する」との全面広告を出した)。続く「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」(1973)でも、当初フィールディングが作曲家としてアサインされていたが、今度はペキンパー自身が出演者の1人であるボブ・ディランの歌を気に入り、彼の音楽を使うことを決めてしまった。フィールディングは音楽アドバイザーとして雇われたが、ディランの曲を5分ほど聴いて強い嫌悪感を抱き、プロジェクトから降りてしまった。また、「戦争のはらわた」(1975)では、プロデューサーが欧州出身の作曲家を起用することを希望したため、フィールディングは作曲の担当からはずされてしまった(この映画のスコアはオーストリア人のアーネスト・ゴールドが作曲した)。

尚、「ガルシアの首」のスコアは、過去に米Bay Citiesレーベルがリリースしたフィールディングの作品集の1つに23分程の組曲(モノラル音源)が収録されていた(「ゲッタウェイ」のリジェクテッド・スコアと「熱い賭け」とのコンピレーション)。また「キラー・エリート」のスコアも、過去にScreen Archives Entertainmentが製作したフィールディングのプロモーションCDの1枚としてサントラ盤がリリースされていた。今回のIntrada盤の内容と、上記Bay Cities盤、SAEプロモーション盤の内容は以下の通り。

 

【Intrada Special Collection Vol.13】

Bring Me the Head of Alfred Garcia

1. Bring It to Me (Main Title) (1:33)
2. Gathering Information (2:11)
3. Marriage Plans (1:59)
4. Prelude to a Rape (2:11)
5. Bennie's Revenge (0:58)
6. Killer's Rhapsody (3:34)
7. Hotel Room (2:08)
8. Requiem for Alfredo (1:59)
9. On the Road (2:36)
10. Night Dig (3:34)
11. Goodbye Elita (1:36)
12. Getting a Head (2:09)
13. Road Kill (1:19)
14. Massacre (1:06)
15. Bennie's Remorse (2:31)
16. El Jefe (3:23)
17. Bennie and Alfredo (1:11)
18. End Titles (2:16)
    Total Time 38:26

The Killer Elite

19. Main Title (2:01)
20. He's Your Buddy (1:56)
21. On the Stairs (2:21)
22. You're Back In (2:03)
23. Love Theme (2:01)
24. Bethlehem Steelyard (7:02)
25. Sailing, Sailing (5:44)
26. Hand to Hand (2:36)
27. Sword to Sword (1:30)
28. End Titles (3:51)
    Total Time 31:08

 

【Jerry Fielding Film Music 3】
(Bay Cities / BCD-LE 4004) 1992

Bring Me the Head of Alfredo Garcia
1. Suite (23:03)

The Getaway
2. Suite from the Rejected Score (17:39)

The Gambler
3. Suite (Based on Mahler's Symphony No.1) (22:24)

 

【The Killer Elite】
(The Jerry Fielding Collection / JFC-2)

1. Main Title (2:01)
2. Hansen Shoots Vorodny and Mike (1:00)
3. He's Your Buddy Cat (1:55)
4. On the Stairs (2:21)
5. In the Limo (2:51)
6. You're Back In, Mike (2:03)
7. Bye Bye, Baby (0:54)
8. Mac's Garage Source (2:47)
9. Strip Joint I (1:28)
10. Strip Joint II (1:25)
11. Strip Joint II(Alternate) (1:34)
12. Garbage Truck (0:45)
13. Let's Go (0:47)
14. Collis Office Source* (5:35)
15. Hansen at Bethlehem Steel Yard (1:05)
16. Crane Stance (1:59)
17. "Salmon-Up-the-River" Shit (0:44)
18. Dock Check (1:26)
19. Hansen Grabs Tokyo Rose (1:28)
20. Hansen Gets His (1:18)
21. Listen Carefully (0:32)
22. Sailing, Sailing (5:44)
23. Collis Gets His (0:50)
24. Hand-to-Hand, Heel-to-Throat (2:34)
25. Sword-to-Sword (1:29)
26. Finis - End Title (3:49)
27. Try a Little Softer** (2:01) (Jerry Fielding / Arthur Hamilton)
    Total Time 53:01

 * Piano Soloist: Artie Kane
 ** Trumpet Soloist: Maurice Harris

(2004年3月)

 

<2008年12月追記>

2008年に米Intradaレーベルより「キラー・エリート」のコンプリート・スコアCDが1500枚限定プレスでリリースされている。収録曲は以下の通り。

(米Intrada / Intrada Special Collection Volume 85)

★TOWER.JPで購入

1. Try a Little Softer (Love Theme from "The Killer Elite") (2:05)
2. Main Title (Alternate) (2:03)
3. Locken Shot (1:21)
4. Buddy Cat (1:56)
5. On the Stairs (2:23)
6. In the Limo (2:51)
7. You're Back In (2:04)
8. Bye Bye (0:54)
9. Mack's Garage (2:47)
10. Club Source (4:27)
    a) Night Club Strip
    b) Marge and Grover Cleveland
    c) Marge and Grover Cleveland
11. Garbage Truck (0:46)
12. Let's Go (0:48)
13. Hot Waltz on Thin Ice in Two Movements Without Pause (5:36)
14. Hansen at Steel Yard (1:06)
15. Crane Stance/Salmon Up the River (2:45)
16. Mack Shoots Hank (1:23)
17. Hansen Gets Tokyo Rose/Hansen Gets His (2:46)
18. Listen Carefully (0:31)
19. Sailing to Suisun Bay (5:47)
20. Collis Gets His (0:51)
21. Mothball Karate (2:35)
22. Swords (1:35)
23. End Credits (3:50)

Score Time: 54:11

Bonus Track
24. Main Title (2:01)

Jerry Fielding

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