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(2000年11月 〜 2001年2月)


<2001年2月>

 

「キャスト アウェイ」 CAST AWAY
Director: Robert Zemeckis
Writer: William Broyles Jr.
Music: Alan Silvestri
Cast: Tom Hanks(Chuck Noland), Helen Hunt(Kelly Frears), Nick Searcy(Stan), Christopher Noth(Jerry Lovett), Lari White(Bettina Peterson), Geoffrey Blake(Maynard Graham), Jenifer Lewis(Becca Twig), David Allen Brooks(Dick Peterson), Semion Suradikov(Nicolai), Nan Martin(Kelly's Mother), Peter von Berg(Yuri), Dmitri S. Boudrine(Lev), Leonid Citer(Fyodor), Anne Bellamy(Anne Larson), Dennis Letts(Dennis Larson), Wendy Worthington(Wendy Larson), Skye McKenzie(Skye Larson), Valerie Wildman(Virginia Larson), John Duerler(John Larson), Steve Monroe(Steve Larson)
Review: 宅配便大手"FedEx"のシステムエンジニアで、一秒も無駄にしないこと仕事の信条としている男(トム・ハンクス)が、出張中の飛行機事故で無人島に流れ着く。「すぐ戻る」と言って空港で分かれた恋人のケリー(ヘレン・ハント)のことを想いつつ、彼は島での孤独で過酷な生活を続けるが、ある時ついに意を決し、いかだを作って海へと漕ぎ出していく・・。予告編を見ると大体この映画の中で何が起きるかわかるが、ほぼあの通りで、結末を除けばあれ以上の展開はあまりない。極めて単純な設定だが、特に主人公が飛行機事故に遭って島に漂着し、色々と試行錯誤しながらサバイバル生活をはじめる部分が非常に丁寧に描かれており、画面にグイグイと引き込まれてしまう。さほどエモーショナルに盛り上がる部分はなく、むしろ淡々とした展開だが、それがかえって迫力を感じさせる。ただ、後半から結末にかけてが少し長く、若干ダレる。音楽の使い方も上手い。映画が始まってからかなり長い間、時々ソース音楽が流れるだけでアンダースコアはなく、特に主人公が無人島で生活する長い描写の部分では全く音楽がない。で、主人公が海に出て行くところから、まるで堰を切ったようにアラン・シルヴェストリによる情感豊かな劇音楽がダーっと流れはじめるが、ここは純粋に映画的な感動を覚える。ハンクスは例によって自然な演技を見せている(ゴールデン・グローブ賞の最優秀主演男優賞を受賞)が、最近出演作の多いハントはさすがにちょっと見飽きた感じがする。非常に「映画らしい映画」を見たという感じがする佳作。この映画は本年度アカデミー賞の最優秀主演男優賞と最優秀音響賞にノミネートされている。
Rating: ★★★

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「ショコラ」 CHOCOLAT
Director: Lasse Hallstrom
Writer: Robert Nelson Jacobs
Based on the novel by: Joanne Harris
Music: Rachel Portman
Cast: Juliette Binoche(Vianne Rocher), Lena Olin(Josephine Muscat), Johnny Depp(Roux), Judi Dench(Armande Voizin), Alfred Molina(Comte de Reynaud), Peter Stormare(Serge Muscat), Carrie-Anne Moss(Caroline Claimont), Leslie Caron(Madame Audel), John Wood(Guillaume Bierot), Hugh O'Conor(Pere Henri), Victoire Thivisol(Anouk Rocher), Aurelien Parent-Koenig(Luc Clairmont), Antonio Gil-Martinez(Jean-Marc Drou), Helene Cardona(Francoise Drou), Harrison Pratt(Dedou Drou), Gaelan Connell(Didi Drou), Elisabeth Commelin(Yvette Marceau), Ron Cook(Alphonse Marceau), Guillaume Tardieu(Baptiste Marceau)
Review: ラッセ・ハルストレム監督の新作で、人々に幸福をもたらす不思議なチョコレートを売る母娘(ジュリエット・ビノシュ、ヴィクトワール・ティヴィソル)が、因習に閉ざされたフランスの小さな村を幸せに導くというファンタジー風のストーリー(原作はジョアン・ハリスのベストセラー小説)。こういうヨーロッパを舞台にしたドラマで、監督も主演女優も非英語圏の欧州人なのに出演者全員が英語を話している映画を見ると、いかにも「アメリカの映画会社(ミラマックス)がオスカー狙いで作ったアート系映画」という感じがするし、事実、この映画は本年度アカデミー賞の作品賞、主演女優賞(ビノシュ)、助演女優賞(ジュディ・デンチ)、脚色賞、音楽賞(レイチェル・ポートマン)の5部門にノミネートされている。しかし、これは確かに不思議な魅力を持った映画である。ハルストレムの演出はファンタジー的な題材の割にはさほどケレン味を感じさせるものではなく、むしろ淡々としたタッチだが、出演者が脇役に至るまで名演揃いで、見終った後の満足度は非常に高い。主役のビノシュはいかにもはまり役だし、厳格な村長を演じるアルフレッド・モリーナ(この人は確か「レイダース・・」の冒頭シーンでインディと一緒に洞窟に入って行くガイドの役だった)や、規律正しい母親を演じるキャリー=アン・モス等も非常にいい味を出している。ビノシュが村人たちをパーティに招き、チョコレートを使った料理をもてなすシーンが印象的。劇中に美味しそうなチョコレートがたくさん出て来るが、唐辛子を少し入れたホットチョコレートというのは早速試してみたくなる。「サイダーハウス・ルール」に続いての起用となるポートマンのスコアは、何故かフランスよりもイタリアを感じさせる音楽だが、控え目でかつ効果的な劇伴スコアとなっている。
Rating: ★★★1/2

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「サトラレ」 TRIBUTE TO A SAD GENIUS
監督: 本広克行
脚本: 戸田山雅司
原作: 佐藤マコト
出演: 安藤政信、鈴木京香、内山理名、松重 豊、小野武彦、寺尾 聡、八千草 薫、小木茂光、深浦加奈子、田中要次、高松英郎、他
音楽: 渡辺俊幸
Review: 自分の考えていることが口に出さなくても周囲の人に筒抜けになってしまうという、1000万人に1人の確率で存在する人間"サトラレ"(正式には乖離性意志伝播過剰障害と呼ぶ)を描いたドラマ。サトラレは例外なくIQ180以上の天才であり、様々な分野で人類に多大な貢献をもたらしているが、自分がサトラレであることを知ってしまうと精神的に耐えられなくなるので、政府は"サトラレ保護法"を制定すると共に"特能保全委員会"を設置し、彼らの能力を最大限に活かすべく施策をとっている。いわば「ワン・アイデアもの」のファンタジー(但し映画オリジナルのストーリーではなく、原作は「モーニング新マグナム増刊」連載中の漫画)だが、設定がやや複雑なのでこれを説明するのにかなり時間を取られ、なかなか本筋に入らない。「踊る大捜査線 THE MOVIE」の本広監督らしいコミカルな演出も見られるが、映画全体のトーンはもっとシリアスである。主人公のサトラレ症例7号(安藤)と、委員会の特命により彼の観察・保護を担当する精神科医(鈴木)との恋愛関係の部分はやや描写が表面的だが、主人公と彼の祖母(八千草)との関係が非常に丁寧に感動的に描かれており、観る者の涙を誘う。自分がサトラレであることを知ってしまった男(松重)の苦悩を描いた部分が中盤にあるが、ここがやや冗長でストーリー展開のテンポが鈍っている。渡辺俊幸の音楽はハリウッド映画をかなり意識しているオーケストラルスコアだが、なぜか見終った後に全く耳に残らない。
Rating: ★★★

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「処刑人」 THE BOONDOCK SAINTS
Director/Writer: Troy Duffy
Music: Jeff Danna
Cast: Willem Dafoe(Paul Smecker), Sean Patrick Flanery(Conner MacManus), Norman Reedus(Murphy MacManus), David Della Rocco(Rocco), Billy Connolly(Il Duce), David Ferry(Detective Dolly), Brian Mahoney(Detective Duffy), Bob Marley(Detective Greenly), Richard Fitzpatrick(The Chief), William Young(Monsignor), Robert Pemberton(Mackiepenny), Bill Craig(McGerkin), Dorothy-Marie Jones(Rosengurtie), Scott Griffith(Ivan Checkov), Layton Morrison(Vladdy), James Binkley(Officer Newman), Matthew Chaffee(Officer Chaffey), Robert Vernon Eaton(Officer Langley)
Review: ボストンを舞台に、とあるいざこざからロシア・マフィアのメンバーを正当防衛で殺してしまったアイルランド系の兄弟(フラナリー、リーダス)が、これをきっかけに正義に目覚め、街に巣くう悪党たちを次々と処刑していく・・。この設定やプロットから、タランティーノが「レザボア・ドッグス」でデビューした時のような尖がった感覚を期待していたが、この映画は何故か非常に丸い印象がある。この監督は多分根が善良な男なのだろう。タランティーノの映画を見ると、非常にドライでタフな演出のタッチに魅了される一方で、この監督はすごく嫌な奴に違いないとの印象を受けるが、この「処刑人」を見ると、監督のダフィはきっといい奴なんだろうなと思ってしまう。悪く言えば毒がない。もちろん派手な暴力描写はふんだんにあるし、セリフも Four Letter Word だらけなのだが、例えば「ジャッキー・ブラウン」の中で、ロバート・デ・ニーロがいきなりブリジット・フォンダを射殺するシーンのような、乾いた残虐性が無い。主人公の兄弟による連続殺人事件を担当するFBI捜査官にウィレム・デフォーが扮しており、女装シーン(気持悪い)があったりしてエキセントリックな演技を見せているが、何故か彼も完全には吹っ切れておらず、単に演技がクサいだけといった感じがある。例えば「レオン」のゲイリー・オールドマンのような真にキレた感覚がない(捜査中にウォークマンでクラシックを聴いたりするのはオールドマンのパロディ?)。主役の2人はハンサムでなかなか魅力的だが、デフォー以外の脇役がやや印象が薄い。ハイスピード撮影による銃撃戦シーンの演出もあまり斬新さはなく、この手のアクションシーンはさすがにもう見飽きた気がする。ジェフ・ダンナによるアイリッシュ・タッチの音楽は良い。
Rating: ★★1/2

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「アメリカン・サイコ」 AMERICAN PSYCHO
Director: Mary Harron
Writers: Mary Harron, Guinevere Turner
Based on the novel by: Bret Easton Ellis
Music: John Cale
Cast: Christian Bale(Patrick Bateman), Willem Dafoe(Donald Kimball), Jared Leto(Paul Allen), Josh Lucas(Craig McDermott), Samantha Mathis(Courtney Rawlinson), Matt Ross(Luis Carruthers), William Sage(David Van Patten), Chloe Sevigny(Jean), Cara Seymour(Christie), Justin Theroux(Timothy Bryce), Guinevere Turner(Elizabeth), Reese Witherspoon(Evelyn Williams), Stephen Bogaert(Harold Carnes), Monika Meier(Daisy), Reg E. Cathey(Homeless man), Marie Dame(Victoria), Krista Sutton(Sabrina), Anthony Lemke(Marcus Halberstram)
Review: 1991年に出版されたベストセラー小説を、「I Shot Andy Warhol」等のメアリー・ハロン監督が映画化。1980年代のニューヨークを舞台に、ウォール街の証券会社に勤務し、物質的には満たされた生活を送るヤッピーのエリート(クリスチャン・ベール)が、突然の殺意から次々と殺人を犯して行く・・。完全に狂った殺人鬼というわけではなく、一見普通の男なのだが、ちょっとした嫉妬や怒りから殺意の衝動が抑えられなくなり、道端のホームレスの男を刺し殺したり、売春婦を自分のアパートに連れ込んで殺したりする。自分に似たエリートの同僚を斧で殺す場面があるが、その理由も、自分が予約できない高級レストランを予約でき、自分よりかっこいい名刺を持っている同僚に対する嫉妬である(この名刺の上質さをヤッピーのエグゼクティヴたちが自慢し合うシーンが可笑しい)。ただ、映画のトーンはストレートな殺人スリラーではなく、精神的に病んだ男を描いた風刺劇として作られているので、殺人のシーンもさほど激しい暴力描写ではい。ハロンの演出は最後まで飽きさせずに見せるが、登場人物の誰にも感情移入できないので、全体的にドラマ性が薄く虚ろな印象なのと、エンディングがやや唐突で話が面白くなりそうになったところでプツンと切れてしまったような感じがする。不条理な感覚を狙ったのかもしれないが、あまり成功していない。ウィレム・デフォーがいかにもひとくせありそうな探偵役で登場するが、大した見せ場もなく映画が終わってしまうので、一体何のために出てきたのかわからない。ジョン・ケイルによるスコアは室内楽風だったり前衛音楽的だったりして、この映画の雰囲気にはよく合っているが、ドラマティック・アンダースコアではないと思う。
Rating: ★★1/2

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「アンブレイカブル」 UNBREAKABLE
Director/Writer: M. Night Shyamalan
Music: James Newton Howard
Cast: Bruce Willis(David Dunn), Samuel L. Jackson(Elijah Price), Robin Wright Penn(Audrey Dunn), Spencer Treat Clark(Joseph Dunn), Charlayne Woodard(Elijah's Mother), Eamonn Walker(Dr. Mathison), Leslie Stefanson(Kelly), Johnny Hiram Jamison(Elijah at 13), Michaelia Carroll(Babysitter), Bostin Christopher(Comic Book Clerk), Elizabeth Lawrence(School Nurse), David Duffield(David Dunn at 20), Laura Regan(Audrey at 20), Chance Kelly(Orange Suit Man), M. Night Shyamalan(Stadium Drug Dealer)
Review: 「シックス・センス」のシャマラン監督による新作であり、しかもスーパーナチュラルな題材ということで、見る前の期待は非常に大きかった。131人の乗員・乗客が死亡するという悲惨な列車事故で、ただ一人だけかすり傷ひとつ負わずに助かった男デヴィッド(ウィリス)。生まれながらの難病のために54回もの骨折を経験している男イライジャ(ジャクソン)。ストーリーはこの両極端の特質を持った二人の不思議な男を中心に展開していくが、冒頭の異常な設定や、中盤にかけてのストーリー・テリングの上手さはさすがで、見る者をぐいぐいと引き込んで行く。主演の二人も適度に抑制された名演を見せている(この映画は監督の希望で、ストーリーの進行と同じ順序で撮影を行ったらしいが、これは演じる側にとっても理想的な方法だろう)。ただ、後半から結末にかけてがどうも釈然としない。非常に単純な、(喩えが悪いが)落語のオチのような結論ともとれるし、より哲学的で深遠な結論ともとれるので、なんとなく見終った後がすっきりしない。シャマラン監督は結末にあるメッセージをこめたのかもしれないが、それが観客に明確に伝わらないのであれば、映画監督としてコミュニケーションに失敗していると言われても仕方がないだろう。また、これは彼の演出スタイルなのだろうが、さほど大したことでもない事柄をいかにも物々しく描くので、全体的にやや大仰な印象を受ける。脚本・演出ともに水準以上の作品だと思うが、どうしても「シックス・センス」と比較してしまうので、前作のようなサスペンスやサプライズや感動を期待していると少し不満が残る結果となるだろう。例によって監督自身が1シーン出演しているが、実に自然な演技で、役者としても才能があるかもしれない。音楽は「シックス・センス」も担当したジェームズ・ニュートン・ハワードだが、前作同様非常に効果的なドラマティック・アンダースコアを提供している。
Rating: ★★★

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<2001年1月>

 

「クリムゾン・リバー」 LES RIVIERES POURPRES
Director/Writer: Mathieu Kassovitz
Based on the novel by: Jean-Christophe Grange
Music: Bruno Coulais
Cast: Jean Reno(Commissaire Pierre Niemans), Vincent Cassel(Lieutenant Max Kerkerian), Nadia Fares(Fanny Fereira), Dominique Sanda(Sister Andree), Karim Belkhadra(Capitain Dahmane), Jean-Pierre Cassel(Dr. Bernard Cherneze), Didier Flamand(The director of education), Francois Levantal(Forensic surgeon), Francine Berge(School headmaster), Philippe Nahon(Man on freeway station), Laurent Lafitte(The director of education's son), Robert Gendreu(Cemetary warden), Christophe Bernard(Skinhead 1), Nicky Naude(Skinhead 2)
Review: 「憎しみ」「アサシンズ」等のマチュー・カソヴィッツが監督・脚本を手がけ、製作費20億円を投じたフランス映画で、アルプス山脈のふもとにある大学街を舞台に、猟奇的な連続殺人事件を捜査する二人の刑事(ジャン・レノ、ヴァンサン・カッセル)を描いたスリラー。前半は、別々の街で一見関連性のない事件を捜査するレノとカッセルのストーリーがパラレルに展開するが、ある時点で二人は共通の手がかりを基に対面し、その後は協力して大学内部に隠された謎と連続殺人との関連性を捜査していく。この前半から中盤にかけてのミステリアスなタッチが抜群に良く、事件の裏に隠された巨大な謎がだんだんと姿を現していく過程にワクワクさせられる。ところが、この中盤で確立したせっかくのスケール感とプロットの深みが、結末で何故か極めて単純な形で収束してしまい、なんとなく時間切れで慌てて終わらせてしまったような印象を受ける。元々こういう脚本なのか、あるいは上映時間を1時間46分に収めるために編集段階でカットされてしまったのかは不明だが、このストーリーにはジャン=クリストフ・グランジェによる原作小説がある(翻訳が2001年2月発刊予定)ので、これを読めば明確になるのかもしれない。この結末の「拍子抜け感」を除けば非常によく出来た良質のスリラーで、カソヴィッツの演出も堂々としたものである。眼科医の役で、J・P・メルヴィル監督の「影の軍隊」等で知られるジャン=ピエール・カッセル(ヴァンサンの実の父親)、事故死した少女の母親役でドミニク・サンダが顔を出しているのが懐かしい。リュック・ベッソン作品等で知られるティエリー・アルボガストによるアルプスの大自然の映像も美しい。音楽は「キャラバン」等のブリューノ・クーレで、ここではシンセとオーケストラに組合せによるドラマティックなサスペンス音楽を書いている。
Rating: ★★★

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「ザ・ウォッチャー」 THE WATCHER
Director: Joe Charbanic
Writers: David Elliot, Clay Ayers
Music: Marco Beltrami
Cast: James Spader(Joel Campbell), Keanu Reeves(David Allen Griffin), Marisa Tomei(Polly), Ernie Hudson(Ibby), Chris Ellis(Hollis), Robert Cicchini(Mitch), Yvonne Niami(Lisa), Jenny McShane(Diana), Gina Alexander(Sharon), Rebakah Louise Smith(Ellie), Joseph Sikora(Skater), Jill Peterson(Jessica), Michele DiMaso(Rachel), Andrew Rothenberg(Jack Fray), David Pasquesi(Norton), Dana Kozlov(Anchorwoman)
Review: キアヌ・リーヴスが孤独な若い女性ばかりを狙う連続殺人犯を、ジェームズ・スペイダーが彼を追うFBI捜査官を演じるスリラー。次に殺す女性の写真を予告として送りつけてくるリーヴスと、殺人予告時間までにターゲットとなる女性を探し出し犯行を阻止しようとするスペイダーとの Cat & Mouse がストーリーの中心となっており、クライマックスはスペイダーのかかりつけの精神分析医(マリサ・トメイ)をリーヴスが拉致し、両者の直接対決となる。主役の2人は存在感があり、なかなかいい味を出していると思うが、脚本が極めて安易で全く意外性やサスペンスがない上、肝心の Cat & Mouse の部分にもあまり知性を感じさせない。リーヴス演じる殺人鬼は狡猾そうに見えて結構ドジだし、スペイダーにいたってはこれでよく捜査官が務まるもんだと思うくらい鈍い。主役2人がこうも情けないと、彼らの対決には全く迫力がなくなってしまう。ラストもなんだかあっけなく、カタルシスがない。監督がミュージックビデオ出身のせいか、回想シーン等に安易にストップモーションのモンタージュを使うので見ていてイライラするし、追跡シーンやカーチェイスシーンの演出も実に機械的で、撮影や編集に独創性やスタイリッシュさがまるでない。この手の映画は嫌いではないのだが、ここまで安直に作られるとちょっと困ってしまう。音楽は「パラサイト」「スクリーム」シリーズ等のマルコ・ベルトラミで、シンセ主体のそれなりに効果的なホラー音楽。なぜかエンドタイトルが一番迫力がある。
Rating: ★★

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「ハート・オブ・ウーマン」 WHAT WOMEN WANT
Director: Nancy Meyers
Writers: Josh Goldsmith, Cathy Yuspa
Music: Alan Silvestri
Cast: Mel Gibson(Nick Marshall), Helen Hunt(Darcy McGuire), Marisa Tomei(Lola), Alan Alda(Dan Wanamaker), Ashley Johnson(Alexandra), Mark Feuerstein(Morgan), Lauren Holly(Gigi), Delta Burke(Eve), Valerie Perrine(Margo), Judy Greer(Erin), Sarah Paulson(Annie), Ana Gasteyer(Sue), Lisa Edelstein(Dina), Loretta Devine(Flo), Diana-Maria Riva(Stella), Eric Balfour(Cameron), Bette Midler(Psychoanalystic)
Review: とあるアクシデントから、まわりにいる女性の考えていることが声となって聞こえてくる能力を身につけた広告代理店のクリエイティブ・ディレクター(ギブソン)と、ライバル企業からヘッドハントされて彼の上司となったやり手の女性エグゼクティブ(ハント)をめぐるロマンティック・コメディ。突然身についた特殊能力のおかげて、女性の気持ちなど全く理解しないプレイボーイ・タイプから女性に共感できる男に変貌していく主人公をギブソンが軽妙に演じているが、どうも彼はこの手のロマンティック・コメディにはあまり向いていないように思う(彼はメイヤーズ監督の第一希望だったらしいが)。女性向け商品の広告表現を考えるために、女性用の化粧品やストッキングを自分で試してみるシーンも、彼が演じているとなぜか全く笑えない。大袈裟に慌てたりキレそうになったりする演技が、「リーサル・ウェポン」シリーズのリッグス刑事の時と全然変わらない。女性が監督していることを考えれば、主人公に聞こえてくる女性の本音の部分は男から見ると興味があるが、劇中に登場する女性キャラクターがかなり極端なタイプばかりなので(コメディだから仕方ないが)、はたして女性が見て共感できるものなのかはちょっと疑問。全体的にやや無駄なシーンが多く、126分の上映時間が非常に長く感じられるのも難点。ベット・ミドラーが精神科医の役でカメオ出演しているが、彼女はこれくらいのチョイ役の方がかえって印象が良い。フランク・シナトラやサミー・デイヴィスJr.の歌が劇中で頻繁に使われているが、コメディを得意とするアラン・シルヴェストリ作曲の劇伴スコアは出番が少なくあまり印象に残らない。
Rating: ★★1/2

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<2000年12月>

 

「ホワット・ライズ・ビニース」 WHAT LIES BENEATH
Director: Robert Zemeckis
Writer: Clark Gregg
Music: Alan Silvestri
Cast: Harrison Ford(Dr. Norman Spencer), Michelle Pfeiffer(Claire Spencer), Diana Scarwid(Jody), Joe Morton(Dr. Drayton), James Remar(Warren Feur), Miranda Otto(Mary Feur), Amber Valletta(Madison Elizabeth Frank), Katharine Towne(Caitlin Spencer ), Victoria Bidewell(Beatrice), Eliott Goretsky(Teddy), Ray Baker(Dr. Stan Powell), Wendy Crewson(Elena), Sloane Shelton(Mrs. Templeton), Tom Dahlgren(Dean Templeton), Micole Mercurio(Mrs. Frank)
Review: フォードとファイファー演じる夫婦は、一人娘を学校の寮に送り出したことで久しぶりに二人きりの生活に戻るが、その日からファイファーは夫の留守中、若い女性の霊に悩まされるようになる。彼女は隣りに新しく引っ越してきた男が妻を殺害し、その霊が自分の家にとり憑いていると考えるが・・。死んだ人間の怨霊が主人公を悩ませるというスーパーナチュラルな要素、ヒッチコックの「裏窓」的な覗き見サスペンス・ミステリの要素、同じくヒッチコックの「断崖」的な殺人疑惑サスペンスの要素等が混在しているプロットだが、これをゼメキス監督は極めて職人的にスリックにまとめている。ただ、個人的にはストレートなミステリ(=科学的に全て説明がつく)と、スーパーナチュラル(=なんでもあり)をごちゃまぜにするのではなく、どちらかにはっきりしてほしかったという気がする。最初から全てスーパーナチュラルなファンタジーとして貫くか、一見超自然的に見えても全て科学的に説明がつくミステリとして描いた方がすっきりするのに、この映画はサスペンスが盛り上がったところで突然スーパーナチュラルな世界に突入するので、とたんに緊張感が軽減してしまう。キーとなるバスルームのシーンはヒッチコックの「サイコ」を意識しており、部分的に同じようなショットがあったりする。非常によくできたサスペンス映画だが、ゼメキス、フォード、ファイファーといったハリウッドのトップクラスの人材が集まってなぜ今これを作りたかったのか、という必然性はよくわからない。音楽はゼメキス監督作品の常連アラン・シルヴェストリだが、ここではバーナード・ハーマンが「サイコ」等ヒッチの映画に書いた音楽に近い効果的なサスペンススコアを提供している。
Rating: ★★★

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「シックス・デイ」 THE SIXTH DAY
Director: Roger Spottiswoode
Writers: Cormac Wibberley, Marianne Wibberley
Music: Trevor Rabin
Cast: Arnold Schwarzenegger(Adam Gibson), Michael Rapaport(Hank Morgan), Tony Goldwyn(Michael Drucker), Michael Rooker(Robert Marshall), Sarah Wynter(Talia Elsworth), Wendy Crewson(Natalie Gibson), Rodney Rowland(Wiley), Terry Crews(Vincent), Ken Pogue(Speaker Day), Colin Cunningham(Tripp), Robert Duvall(Dr. Griffin Weir), Wanda Cannon(Katherine Weir), Taylor Anne Reid(Clara Gibson), Jennifer Gareis(Virtual Girlfriend)
Review: 人間のクローニングが技術的に可能となった近未来を舞台にしたSFアクション。観光ヘリコプターのパイロット(シュワルツェネッガー)が、法律で禁じられたクローン人間を密かに生産している実業家の陰謀に巻き込まれ、自分のクローンを作られてしまう・・。フィリップ・K・ディックの「にせもの」という短編小説に少し設定が似ているが、あの傑作短編にみなぎる鋭い緊迫感はこの映画には皆無である。人が死んでもクローンを作って過去の記憶を植え付ければその人物が蘇ったのと同じ事になる、という便利な設定があるので、登場人物がいとも簡単にバタバタ死んでいく極めて安易なストーリー展開になってしまい、サスペンスがまるでない。主人公を執拗に追いかける殺し屋たちは、何度死んでもクローンとして再生されてまた登場するので、あたかもターミネーターのような不死身の強敵という錯覚を起こすが、考えてみればスーパーエージェントでもなんでもないただの民間人である主人公に何回も殺されてしまう間抜けで無能な奴らの集まりでしかない。悪役がこんな情けない連中では、ストーリーに緊張感が生まれるわけがないのである。シュワルツェネッガーもかつてのような観客動員力がなくなってしまったが、映画自体がこれだけお粗末な内容だと、彼だけの責任とは言えないだろう。ただ、冒頭で彼が善良な家庭人を演じているシーンは、あまりの演技力のなさに見ているこっちが恥ずかしくなってしまう。トレヴァー・ラビンの音楽はシンセサイザーを主体としたアクションスコアで、それなりに効果的だが、メインテーマのストイックなタッチのフレーズはなんとなく場違いな印象を受ける。
Rating: ★★

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「バーティカル・リミット」 VERTICAL LIMIT
Director: Martin Campbell
Writers: Robert King, Terry Hayes
Music: James Newton Howard
Cast: Chris O'Donnell(Peter Garrett), Bill Paxton(Elliot Vaughn), Robin Tunney(Annie Garrett), Scott Glenn(Montgomery Wick), Izabella Scorupco(Monique Aubertine), Nicholas Lea(Tom McLaren), Alexander Siddig(Kareem), Steve Le Marquand(Cyril Bench), Ben Mendelsohn(Malcolm Bench), Robert Taylor(Skip Taylor), Stuart Wilson(Royce Garrett), Ed Viesturs(Ed)
Review: 「ワン・アイデア映画」である。強烈なサスペンスを観客に与える映画を作りたいとする。さて、どうするか?ここで言う「サスペンス」とは、最悪の事態を予測してハラハラ・ドキドキする感覚のことである。その典型は、レニー・ハーリン監督の「クリフハンガー」のような「高い所から落ちそうになる」サスペンスと、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督の「恐怖の報酬」のような「爆発しそうになる」サスペンスである。だったら、この2つの状況を組み合わせれば究極のサスペンス映画になるに違いない、というのがこの映画の「ワン・アイデア」。K2登頂に挑んだ登山隊が、天候の急変で雪崩に襲われ、その内の3人が深いクレバスに落下して閉じ込められてしまう。遭難者の1人(タニー)の兄(オドネル)を含むレスキュー隊は、クレバスを塞いでいる岩を吹き飛ばすためのニトログリセリンを背負って、標高8000メートルの雪山へと向かう・・。いたって単純なストーリーだが、「ニトロを背負って高山に登る」という異常な設定なので、「落ちそうになる」+「爆発しそうになる」という二重のサスペンスが次から次へと展開し、うんざりするほどの緊張感をもたらしている。これに、主人公たちの兄妹、親子、夫婦の絆といった描写を加えてドラマ性も持たせようとしている。レスキュー隊の1人で、脇役なのになぜか見せ場の多いイザベラ・スコルプコは、どこかで見たことがあると思ったら、キャンベル監督の出世作「007/ゴールデンアイ」でボンドガールを演じた女優だった。「ゴールデンアイ」では悪役のファムケ・ヤンセンの方が先に売れたが、イザベラもこの映画を機に今後は巻き返しを図るのかもしれない。パクストンは例によって情けない悪役(彼はかっこいい役よりこういう役の方が似合う)だが、ベテランの登山家に扮するスコット・グレンがなかなか渋い。J・N・ハワードの音楽もシンセとオーケストラの組み合わせによるパワフルなスコアで良い。
Rating: ★★★

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「13デイズ」 THIRTEEN DAYS
Director: Roger Donaldson
Writer: David Self
Music: Trevor Jones
Cast: Kevin Costner(Kenny O'Donnell), Bruce Greenwood(John F. Kennedy), Steven Culp(Robert Kennedy), Henry Strozier(Dean Rusk), Dylan Baker(Robert McNamara), Charles Esten(Major Anderson), Alan Francis(Executive Officer/USS Pierce), Phil Hawn(U. N. Administrator), Lucinda Jenney(Mrs. O'Donnell), Marya Kazakova(Dobrynin's Assistant), Bill Smitrovich(Gen. Maxwell Taylor), Oleg Vidov(Soviet Ambassador Valerian Zorin), Caitlin Wachs(Kathy O'Donnell), Peter White(John McCone)
Review: 1962年10月に勃発した「キューバ危機」を描くポリティカル・サスペンス。カストロ政権下のキューバに、アメリカを標的としたソ連の核ミサイルが配備されていることを米軍偵察機が発見。その後の13日間における第三次世界大戦突入の危機に、当時の米国大統領J・F・ケネディ、司法長官R・ケネディ、大統領特別補佐官K・オドネルを中心とした米国首脳がいかに対処したかを描く。ここでのストーリーがどこまで歴史的に正しいのかは不明だが、次から次へと起こる危機に主人公たちが苦悩する様をサスペンスフルに描いており、2時間25分の上映時間を飽きさせずに見せきっている。この手の映画はオリヴァー・ストーンあたりが撮りそうだが、ここでは「追いつめられて」「ゲッタウェイ」「スピーシーズ」「ダンテズ・ピーク」等エンターテインメント系のロジャー・ドナルドソンが監督している。当時のニュース映像を組み込んだり、所々白黒で撮影したりしてドキュメンタリー的な効果を狙っているようだが、こういう表現は「JFK」等でのストーンの方が数段上手い。結果としてドキュメンタリーにもドラマにもなりきらない中途半端な印象が残ることは否めない。「ケネディ兄弟とオドネル=正義」vs「軍部=悪役」という、やや一方的な描写も少し鼻につく(軍部の描き方が否定的であるとして米国国防省はこの映画への撮影協力を拒否したらしい)。ケヴィン・コスナー以外のキャストは非常に地味だが、かえって信憑性があり、逆にコスナーだけが浮いて見える(彼はこの映画のプロデューサーの一人でもある)。トレヴァー・ジョーンズ作曲の重厚で緊張感のあるオーケストラル・スコアが秀逸。
Rating: ★★★

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「セブンズ フェイス」 SEVEN'S FACE
企画・原案: 秋元 康
監督: 麻生 学
脚本: 遠藤察男、高野和明
出演: 萩原聖人、奥菜 恵、岸部一徳、高橋かおり、梶原 善、杉本 清、河相我聞、山崎 一、伊佐山ひろ子、洞口依子、天本英世、他
Review: BSデジタル開局記念番組として、WOWOWで12月1日から1日5分ずつ放映されているテレビドラマ。12月24日(日)午後10時から、それまで放映した分にラストシーンを加えた2時間の最終回スペシャルを放映することになっているが、そのスペシャル版の試写をWOWOW社内で見たもの。聖書と猫と一緒に氷詰めにされて発見された若い女の死体。その殺人犯はホームページで犯行を予告していた・・(現在放映中なのでこれ以上書けません)。このドラマの脚本は私の友人である高野和明(カズハル)氏が書いている(遠藤察男が脚本家として先にクレジットされているが、大半は高野氏が書いたもの)。彼はこのドラマと同じ秋元康氏がプロデュースしたインターネットドラマ「グラウエンの鳥篭」の脚本も手がけた経緯があり、今回のドラマに再起用されたらしい。「グラウエンの鳥篭」は1日1分のドラマをウェブサイトで動画配信し、これを1年間続ける(全体で365分のドラマ)という企画が話題になった。これはグラウエン・ハイムと呼ばれるアパートの住人が一人ずつ何者かに殺されていく、というミステリドラマだったが、今回の「セブンズ フェイス」も連続殺人事件を巡り怪しい容疑者が複数登場する凝ったミステリになっている。ドラマの中の日付と、WOWOWでの放映日が一致していてリアルタイムで進行する上に、ドラマと同時進行するウェブサイトも公開されている。伏線の張り方や、展開の意外性など、いかにも彼らしい脚本で面白かったが、彼曰く「ストーリーに画期的などんでん返しを組み込んだのに、製作側の意向で変更されてしまった」とのこと(それがどの部分か知りたい方は、放映後に私までメールをください)。彼は「グラウエン・・」をやった後、ネット関連のドラマの仕事がよく来るようになったらしいが、本人はパソコン嫌いでインターネットも必要最小限しか使っていないし、今でもワープロ専用機で脚本を書いている人物である。
Rating: ★★★

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<2000年11月>

 

「チャーリーズ・エンジェル」 CHARLIE'S ANGELS
Director: McG
Writers: Ryan Rowe, Ed Solomon, John August
Music: Edward Shearmur
Cast: Cameron Diaz(Natalie), Drew Barrymore(Dylan), Lucy Liu(Alex), Bill Murray(Bosley), Sam Rockwell(Eric Knox), Kelly Lynch(Vivian Wood), Tim Curry(Roger Corwin), Crispin Glover(Thin Man), Matt LeBlanc(Jason), LL Cool J(Mr.Jones), Tom Green(Chad), Luke Wilson(Pete), Sean Whalen(Pasqual), John Forsythe(Voice of Charlie)
Review: 1977年に日本でもTV放映された「地上最強の美女たち! チャーリーズ・エンジェル」の映画版リメイク。TVシリーズはリアルタイムで見ていたので、オープニングのテーマ曲とかが懐かしい。オリジナルのエンジェルたち(ケイト・ジャクソン、ファラ・フォーセット、ジャクリーン・スミス)にもこの映画へのゲスト出演の依頼があったらしいが、全員が断ったという。ただ、TVでチャーリーの声を演じたジョン・フォーサイスがこの映画でも同じ役で登場するのが楽しい(吹替版を作る際には是非とも中村 正氏に声をあててもらいたい)。元のTVシリーズのコンセプトは「美女たちが活躍する肩のこらないセクシー・アクション」だったと思うが、今回の映画もまさしくその通りの娯楽作品で、期待以上でも以下でもない(この映画に凝りに凝ったプロットや感動的な演技を期待している人はいないだろう)。ストーリーは単純で予想通りの展開だし、上映時間も98分でアっという間に終わってしまいほんとに肩もこらないが、主演女優たち(特にキャメロン・ディアス)のはじけるような魅力で見せきっている。McGの演出もミュージック・ビデオのノリ。TVシリーズの時よりも笑いの要素が強いのは、キャメロン、ドリュー、ビル・マレーといったコメディを得意とする役者のせいだろう。悪役で登場するクリスピン・グローヴァーまで何となくおかしい。「マトリックス」等のユエン・チョンヤンの武術指導によるエンジェルたちのカンフーアクションがなかなか決まっており、「ゴジラ×メガギラス」の田中美里も彼女たちを見習ってほしい。
Rating: ★★★

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「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」 GODZILLA VS MEGAGUIRUS
監督: 手塚昌明
脚本: 柏原寛司、三村渉
出演: 田中美里、谷原章介、伊武雅刀、星 由里子、勝村政信、池内万作、山口
馬木也、山下徹大、永島敏行、かとうかずこ、中村嘉葎雄、他
音楽: 大島ミチル
Review: ゴジラシリーズ24作目。西暦2001年、ゴジラの被害に苦しむ日本が、「マイクロブラックホール」を出現させてゴジラを消し去るという究極兵器を完成させる。対ゴジラ戦闘部隊<Gグラスパー>というのが出てくるが、ここで作戦の指揮をとるG対策本部長役の伊武雅刀が結構笑わしてくれる。陣頭指揮をとるべき緊迫した状況でなぜかいつも悠長に一人でチェスをやってるし、政府の高官に対するG消滅作戦のプレゼンテーションの際に、「そんなSFみたいなことが可能なのか?」と批判する出席者に対して何か説得力のある説明を返すのかと思うと、「ここはひとつよろしくご協力をおねがいします(媚びた笑い)」とまるで二流のセールスマンみたいな回答をしたりする。一番笑えるのはマイクロブラックホールをゴジラに撃ち込んで消滅させるという究極兵器を発射する場面で、兵器の照準が狂っていて一発目をはずしてしまった時のセリフ。本部長「早く2発目を発射するんだ!」 科学者「次を発射するまでの冷却に1時間かかります」 本部長「ぬわにぃー?!」 指揮官がなんでそんな重要なスペックを知らんのだ!これはコメディだったのか??? 主演の田中美里はGグラスパー隊長役としてここではアクション女優を目指したというが、動きがいかにも女の子だし、たどたどしいセリフまわしも何とかしてもらいたい。フルCGIのUSAゴジラがNYの街を破壊するリアルな映像を見たあとで、着ぐるみゴジラがミニチュア然としたビルを破壊するシーンを見せられると、これはもう「この手法が本流なんだ!」という開き直りとしか思えない(ただ、一方では巨大昆虫の大群にCGIを使ったりしている)。お台場の空撮から海の中をこちらに向かってくるゴジラをとらえる長いワンショットはなかなか迫力があった。大島ミチルの音楽も怪獣映画的オーケストラルスコアで良い。
Rating: ★★

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「スペース カウボーイ」 SPACE COWBOYS
Director: Clint Eastwood
Writers: Ken Kaufman, Howard Klausner
Music: Lennie Niehaus
Cast: Clint Eastwood(Frank Corvin), Tommy Lee Jones(Hawk Hawkins), Donald Sutherland(Jerry O'Neill), James Garner(Tank Sullivan), James Cromwell(Bob Gerson), Marcia Gay Harden(Sara Holland), William Devane(Eugene Davis), Loren Dean(Ethan Grace), Courtney B. Vance(Roger Hines), Barbara Babcock(Barbara Corvin), Rade Sherbedgia(General Vostov), Blair Brown(Dr.Anne Caruthers)
Review: ロシアの通信衛星が故障し、軌道をはずれて地球に落下してくるが、旧式のシステムを使用しているこの衛星を修理できるのは、かつて宇宙飛行の夢を絶たれたフランク(イーストウッド)たち4人の老飛行士だけだった・・・。単純なストーリーで演出もフラットだが、主役である4人のベテラン俳優の強力な存在感と魅力で見せる映画。特に60〜70年代のアクション映画ファンにとってはイーストウッド、サザーランド、ガーナー(+脇で登場するウィリアム・ディヴェイン)の共演は嬉しい。サザーランドは最近では渋い悪役が多かったが、ここでは「特攻大作戦」(67)「M★A★S★H」(70)、それにイーストウッドと共演した「戦略大作戦」(70)等での陽気で軽妙なキャラクターを再現しており実に楽しい。ガーナーは「大脱走」(63)「砦の29人」(66)「墓石と決闘」(67)といった劇場映画やTVの「ロックフォードの事件メモ」(74)で有名だが、この映画ではサザーランドとともに「お笑い部門」を担当している。トミー・リー・ジョーンズのみ「JFK」(91)「沈黙の戦艦」(92)「逃亡者」(93)等90年代以降に有名になった役者だが、この映画では観客の共感を誘う最も得な役をもらっている(彼は「ローリング・サンダー」(77)でディヴェインと共演している)。最近(つまらない)脇役での出演が多いディヴェインも、ここでは割といい役で出て来る。全体にコミカルでおっとりとした演出で、後半の宇宙での展開もあまり強いサスペンスがないが、監督のイーストウッドは娯楽映画としてきちんと作っていると思う。ただ、登場する女性がことごとく魅力に乏しいのはやはりこの監督の弱点かもしれない。
Rating: ★★★

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「バトル・ロワイアル」 BATTLE ROYALE
監督: 深作欣二
原作: 高見広春
脚本: 深作健太
出演: 藤原竜也、前田亜季、ビートたけし、山本太郎、安藤政信、柴咲コウ、塚本高史、高岡蒼佑、小谷幸弘、栗山千明、石川絵里、三村恭代、他。
音楽: 天野正道
Review: 中学生の1クラス42名が無人島で最後の1人になるまで殺し合うというセンセーショナルなテーマが話題となったベストセラー小説の映画化。設定が設定なのでもっとゲーム的な展開の娯楽アクション映画を想像していたが、これが結構シリアスなタッチで見ていてなんとも疲れる。深作監督は、太平洋戦争中兵器工場で働いていた時に艦砲射撃でバラバラになった死体の処理をしたという中学生時代の原体験をベースに演出しているが、これに共感するのはちょっと難しいと思う。ただ、アクション演出にはこのジャンルのベテランらしい切れ味の良さを見せる。灯台に立てこもる女の子数名が一見仲良く団結しているように見えるが、ちょっとした不信感からあっという間に血で血を洗う殺し合いになる集団ヒステリー的な演出も上手い(普通の中学生がなぜ皆銃器の扱いに慣れた射撃の名手ばかりなのかという疑問はあるが・・・)。ビートたけしは彼のキャラクターそのままの役であまり新鮮味がないが、準主役的に登場する山本太郎がなかなか良い。天野正道による音楽はワルシャワフィルの演奏によるオーケストラルスコアで、もう「一生懸命書きましたっ!」という感じが好感が持てるが、大袈裟すぎてちょっと恥ずかしい(特にクラシックの既製曲の使い方・・・)。
Rating: ★★1/2

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「インビジブル」 HOLLOW MAN
Director: Paul Verhoeven
Writer: Andrew W. Marlowe
Music: Jerry Goldsmith
Cast: Elisabeth Shue(Linda), Kevin Bacon(Sebastian), Josh Brolin, Kim Dickens, Greg Grunberg, Joey Slotnick, William Devane
Review: ポール・ヴァーホーヴェンは憎めない監督である。決して巨匠ではないし、職人監督というほど技術的に巧くもない。かなり過激な題材をケレン味たっぷりに撮るので、真正面から受け止めると非常にOffensiveになり得るが、本人はいつもOne Big Jokeのつもりで作っているのだと想像する。ハインラインの名作小説を映画化した「スターシップ・トゥルーパーズ」などは、まるで戦時中のプロパガンダ映画みたいなトーンで、真面目にとると危険なメッセージとも考えられるが、ジョークとして見るとこれほど痛快な映画はない。この「インビジブル」もシリアスなサスペンス映画として見ると実にくだらないB級作品になってしまう。天才的な科学者が透明人間になる方法を発見したら、彼は何をしようと考えるか?「そりゃーエッチなことにきまってるでしょー」というのがこの映画のテーマで、多分監督はそれ以上に特に言いたいことはないように思う。そういう軽いノリで見ると、あまりのくだらなさにも腹が立たなくなるし、結構楽しめる。人間が透明化する過程も、単にボヤーっと消えるのではなく、皮膚がなくなり血まみれの肉の塊となり骨となって消えていくというグロテスクさがヴァーホーヴェンならでは。ただ、彼のいつもの作品と比べて少し弱いのは主役を演じるベーコンやシューの魅力のなさのせいだと思う。私の好きなウィリアム・ディヴェインが脇で出て来るが、あまり意味のない役で残念。ゴールドスミスのスコアは、ストレートなサスペンス音楽ではなく、官能的なタッチを加えているところが面白い。ヴァーホーヴェンはサイテー映画を選ぶラジー賞にも律義に出席して受賞スピーチをしたりするおかしなオランダ人のおっさんだが、私は好きである。でもこの映画は本当にくだらない。
Rating: ★★1/2

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