リチャード・ロジャース
  Richard Rodgers

Date of Birth: 1902/6/28
Place of Birth: New York, New York, USA
Date of Death: 1979/12/30

 


サウンド・オブ・ミュージック(35周年記念盤)
THE SOUND OF MUSIC - 35th Anniversary Collector's Edition

作曲:リチャード・ロジャース
Composed by RICHARD RODGERS

作詞:オスカー・ハマースタイン2世
Lyrics by OSCAR HAMMERSTEIN II

指揮:アーウィン・コスタル
Conducted by IRWIN KOSTAL

(BMG / BVCZ-31012-3)

cover
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もちろんこれはミュージカル映画のメガヒット作品のサントラで、ドラマティック・アンダースコアを紹介する場所には不適当かもしれない。しかし、映画音楽作曲家を語る上でリチャード・ロジャースを無視することはできないと思う。例えば彼は「(TV)世界海戦史」(1952)という(ミュージカルではない)ドキュメンタリーに見事なオーケストラル・スコアを提供している。また、この「サウンド・オブ・ミュージック」のアルバムは、映画公開35周年を記念して2000年にリリースされた未発表曲を多数含む2枚組みのCDで、歌曲だけでなくロジャース作曲によるオーケストラの劇伴音楽も収録されているので、敢えてここで紹介することにした。

オーストリアに実在した有名なマリア・アウグストとトラップ一家の物語を描いた、リチャード・ロジャースオスカー・ハマースタイン2世のコンビによるブロードウェイ・ミュージカルの映画化(1964年製作)で、監督は「ウエスト・サイド物語」(1961)ロバート・ワイズが担当(彼はミュージカル専門の監督ではなく、むしろ「(未公開)キャットピープルの呪い」(1944)「地球の静止する日」(1951)「たたり」(1963)「アンドロメダ・・・」(1971)「スター・トレック」(1979)といったSF・ファンタジーのジャンルで知られている)。脚本は「王様と私」(1956)「ウエスト・サイド物語」「ハロー・ドーリー!」(1969)アーネスト・レーマン(彼もミュージカル以外に「麗しのサブリナ」(1954)「成功の甘き香り」(1957)「北北西に進路を取れ」(1959)「ファミリー・プロット」(1976)「(未公開)ブラック・サンデー」(1977)等の傑作を手がけている名手)。出演はジュリー・アンドリュースクリストファー・プラマー、エリノア・パーカー、ペギー・ウッド、リチャード・ヘイドン、アンナ・リー、チャーミアン・カー、ニコラス・ハモンド、ヘザー・メンジース、アンジェラ・カートライト他。1965年度アカデミー賞の作品賞、監督賞、ミュージカル映画音楽賞(アーウィン・コスタル)、編集賞、録音賞を受賞。オーストリアのザルツブルグに行くと、いまだにこの映画のロケ地を巡る「サウンド・オブ・ミュージック・ツアー」のようなものがあって、この都市はこの映画のおかげでかなりの観光収入を享受していると思う。

この2枚組CDの1枚目は以前からあったアルバムのデジタル・リマスター版だが、2枚目にはこれまで未収録だった歌のバージョンや劇伴音楽も含まれていて、ファンにとっては非常に貴重なリリースとなっている(2枚目のプロデュースはニック・レッドマン)。未収録曲には、冒頭のヘリコプター・ショットからマリア(アンドリュース)の歌へと展開する「前奏曲〜サウンド・オブ・ミュージック」の映画に使われたバージョンや、フォン・トラップ大佐(プラマー)とリースル(カー)がトラップ家の居間で歌う「エーデルワイス」、マリアとリースルが歌う「もうすぐ17才」等も含まれており、特に「もうすぐ17才」は実際の映画でカットされたアンドリュースによるイントロ部分まで収録されている。その他、日本のJRのCMでも使われた名曲「私のお気に入り」や、アベス修道院長(ウッド)の歌う「すべての山に登れ」(個人的にはこの映画の中で一番好きな曲)、マリアと大佐による「何かよいこと」、トラップ一家が音楽会で歌う「エーデルワイス」等も、映画でのバージョンがそのまま収録されている。更に上述したように、「ザルツブルグ・モンタージュ」「グランド・ワルツ」「レントラー・ワルツ」「行列ワルツ」「追跡」といったオーケストラル・スコアも含まれており、実に興味深い。

ここに収録されたロジャース作曲の歌曲はまさに珠玉の名曲揃いで、これらの曲が全て同じ人間によって短期間のうちに発想され作曲されたとは信じ難い。正に天才のひらめきだと思う。「エーデルワイス」などは、オーストリアに昔から伝わる民謡のようなオーセンティックな響きがあるが、この曲もアメリカ人のロジャースがこの映画のために書いたオリジナルである(ベースになった曲があるのかもしれないが)。

尚、2枚目のCDの最後には珍しいリチャード・ロジャースのインタビューが収録されており、この中でミュージカル以外の劇音楽に挑戦した「(TV)世界海戦史」での成功を誇らしげに語っているところが印象的。

リチャード・ロジャースは、この作品の他にもオスカー・ハマースタイン2世(1895〜1960)とのコンビにより「オクラホマ!」(1955)「回転木馬」(1955)「王様と私」(1956)「南太平洋」(1958)「フラワー・ドラム・ソング」(1961)等のブロードウェイ・ミュージカルの映画化や、最初から映画用に書かれた「ステート・フェア」(1945)、TVミュージカルの「シンデレラ」(1957)といった名作を残している。「オクラホマ!」の主題歌は米国オクラホマ州の州歌に採用されている名曲。
(2000年10月)

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(TV)世界海戦史 VICTORY AT SEA

作曲:リチャード・ロジャース
Composed by RICHARD RODGERS

指揮:ロバート・ラッセル・ベネット
Conducted by ROBERT RUSSELL BENNETT

演奏:RCAビクター交響楽団
Performed by the RCA Victor Symphony Orchestra

(米RCA / 6660-2-RC) 1987

アメリカのNBC TVで1952年の10月16日から放映された26回もののドキュメンタリーで、第二次世界大戦における海軍の活躍を記録したもの。製作はヘンリー・サロモン。監督はM・クレイ・アダムス。脚本はリチャード・ハンサーとヘンリー・サロモンで、レナード・グレーヴスがナレーションを担当した。日本でも1967年に108分の劇場版が公開されている。

このTVドキュメンタリーは、リチャード・ロジャースが音楽を担当したことでアメリカでは広く知られており、サントラ盤もベストセラーになっている。ミュージカルで成功を収めていたロジャースは、この作品の劇音楽をプロデューサーのサロモンから依頼された際、全く新しいジャンルへの挑戦に当初は躊躇したらしいが、試写室でラフカットの一部を見て感動し、作曲を引き受けたという。彼はこのドキュメンタリーのために、なんと13時間におよぶ一大交響曲を作曲したが、このCDに収められているのはロバート・ラッセル・ベネットの編曲・指揮により1957年と1959年に録音された約72分のダイジェストで、天才的なメロディ・メーカーであるロジャースによるドラマティック・アンダースコアの魅力に溢れた名盤である。

特に、果てしなく広がる大海原を行く海軍の船を描いた壮大なメインテーマ「The Song of the High Seas」や、豪快なマーチ「Guadalcanal March」、南大西洋での戦いを描いた美しく優雅なタンゴ「Beneath the Southern Cross」等は、いかにもロジャースらしい名曲。中でも素晴らしいのはウィリアム・ウォルトンの音楽を想わせる荘厳なマーチ「Hard Work and Horseplay」で、親しみやすさと格調の高さを兼ね備えた傑作。複数の主題を組み合わせた感動的なフィナーレ「Victory at Sea」も良い。

尚、ロジャースはここで作曲した音楽の一部(Beneath the Southern Cross等)を、後に自作のミュージカルで流用している。
(2000年10月)

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